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第5回ボアオ・アジア・フォーラム 二階大臣演説

(06.04.22 中国・ボアオ)

中国語版 英語版

 

 

(1.はじめに)


今回、ボアオ・アジア・フォーラムにおいてスピーチの機会を頂き、誠に光栄に存じます。御招待頂きました龍永図事務総長に感謝申し上げます。

 

 豊かな海に抱かれた風光明媚な海南島のボアオは2000年の歴史を持つ「蓮の花」を通じて日本との深い友情の絆で結ばれており、私にとっても思い出の多い地であります。私たちは蓮の花を「平和と寛容の象徴」と呼んでおります。日本の東京大学のグラウンドの地中から発見された2000年前の蓮の実が見事に開花に成功し、「大賀蓮」と呼ばれる神秘のような蓮の花であります。このことは、私が高校時代に恩師から学んだものであります。私はこの大賀蓮はきっと中国から渡ってきたものであろうと考え、大賀蓮の花の中国への里帰りを計画しました。「荷風千里」という言葉がありますが、蓮の花の香りは風に乗って千里の遠くまで届くという意味で恩師の教えを信じ、中国への移植に二十数年前から取り組んで参りました。


本日、このロータスの香りがするボアオの地からアジアの皆様に「平和」と「寛容」と「友好」のメッセージを必ずお届けすることが出来ることを信じて、私の考えを申し上げます。



(2.日本経済の将来― アジアの中の日本としての成長 「新経済成長戦略」)

 

 東アジアの将来に夢をはせる前に、まず日本経済の将来、発展の方向性についてご報告申し上げます。

現在、日本経済はバブル崩壊後の長いストック調整の苦難の道を乗り越え、ようやく景気拡大期を迎えるに至りました。一方で、日本の人口が減少過程に入ったことを捉え、日本経済は将来縮小していくのではないかとの悲観的な見方をする人も内外にあろうかと思います。しかし、私は、今後10年にわたって、実質GDPにおいて年率2.2%以上の成長を着実に実現することが可能であると確信しております。


私は、日本経済を「新しい経済成長」に導くために、2つの「好循環」を創り出し、それを「人材」の活用によって実現するという構想に積極的に取組んで参ります。

 

<イノベーションと需要の好循環>


第一に、「世界のイノベーションセンター」として、日本から新商品・新技術を世界に発信、提供し、世界レベルでの「イノベーションと需要の好循環」を創出することを目指します。我が国はこれまでも、世界初の魅力的な製品群を世界の人々に提供し、新しいイノベーションの苗床となる新たな需要の喚起に成功してきました。これからも、新たな産業群の創出に果敢に挑戦して参りたいと考えております。

 

<日本とアジアの成長の好循環>


第二に、アジア諸国と日本の間の相互依存の関係を深めて、「日本とアジアの成長の好循環」を創出することを目指します。そのためには、ヒト、モノ、カネが一層自由に日本とアジア諸国の間を流れるような事業環境を構築していくことが重要と考えております。

 

<人財立国>


第三は、こうした「好循環」を通じて「新しい経済成長」を実現するためには、一人当たりの生産性の向上を図るとともに、イノベーションを生み出す優秀な人材の育成が鍵であります。将来を担う人材への投資を思い切って推進するとともに、産業界、地域、学校の力を結集し、「人財立国」を目指して参ります。

 

 

(3.東アジア経済統合に向けた今後の日本の役割)

 

 次に東アジア経済全体に目を転じて参りたいと思います。

 

 今日の東アジアにおける経済発展の牽引力となったのが、日本を含む国際企業の直接投資活動であります。国際企業の投資を通じて、域内の経済成長が促進され、他方で経済成長は更なる直接投資を惹きつけるという「東アジアの成長ダイナミズム」が生まれました。こうした経済の実態を背景にASEANを中心にFTAやEPA推進の動きが更に活発化してきております。

 

 こうした東アジア経済統合の潮流を確実にするため、私は、「東アジア経済連携(EPA)」構想、「東アジア版OECD」構想、「アジア人財資金(仮称)」構想を提唱したいと思います。

 

<「東アジア経済連携(EPA)構想」の提唱>


東アジアの成長・発展の源泉である自由な貿易・投資の成長・発展を維持するためには、物品協定のようなモノの貿易だけを対象とするのではなく、投資、サービス、知的財産、経済協力等を含む、包括的で質の高い経済連携協定の締結が必要でありましょう。


現在、東アジアでは、EPA・FTA締結が急速に進展し、2007年中には東アジアの多くの国々とASEANとのEPA・FTAの成立が見込まれていることから、東アジア全域を対象としたEPAを推進する機が熟しつつあるものと考えております。私は、包括的で質の高い経済連携協定としての「東アジアEPA」の交渉を、2008年を目途に開始することを提唱します。

 

 なお、東アジア経済が、米国をはじめ域外との貿易投資関係に深く依存している現状から、我々は、東アジア経済圏を開かれた経済圏として形作っていくべきだと考えます。

 

 一方、WTOドーハ・ラウンド交渉の、今後の進展は決して楽観視できる状況ではありませんが、日本としてはあくまでもラウンド成功に向け、最大限の貢献・関与を進める考えであります。更に、発展途上国支援の一環として、途上国の特色ある商品等の発掘・育成などを内容とする国際版の「一村一品」運動を積極的に展開してまいります。

 

<東アジア版OECDの設立の提唱>


今後、東アジアの更なる経済統合のためには、その推進母体を強化する必要があり、東アジアでも、OECD(経済協力開発機構)を参考に、統合を支える組織として、同様のシンクタンク機能を整備していく必要があります。こうした問題意識の下、私はASEAN事務局を核として、中長期的に「東アジア版OECD」を設立する構想を提唱致したいと思います。その第一歩として、ASEAN事務局と協力し、シンクタンク機能を有する「研究センター」を我が国の資金的貢献によって設立したいと考えております。

 

<「アジア人財資金(仮称)」構想の提唱>


東アジアの経済統合を進めていくため、東アジア各国の実情に通じ、相互協力の架け橋となる人材も今から育成していかなければなりません。東アジアにおける人材の交流を更に拡大するため、「アジア人財資金(仮称)」構想を提唱致します。


具体的には、東アジアの優秀な学生や研究者に対して、勉学・研究に専念できる環境整備を図り、また、アジア・日本のビジネスに精通した人材を育てるため、日本企業でのインターンシップ実習など実践的な教育を促進し、就職面でのサポートも強化してまいります。同時に、我が国の若者を東アジア各国に留学させるチャンスを与えていただき、将来、東アジア各国との「橋渡し役」となるような若い優秀な人材を育ててまいります。

 

 小泉総理大臣のリーダーシップの下に、私は、関係各国の皆様方とよくご相談をしながら、こうした構想を今後着実に実現させていきたいと考えております。

 

 

(4.世界の中の「日中関係」)

 

 最後に、今、世界中から注目されている日中関係について触れておきたいと思います。

 

 日中両国間には、両国の多くの先人の方々の弛まざる努力によって、あらゆる困難を克服しながら、深い結びつきが築かれて参りました。日中が向かい合っている関係だけではなく、両国が積極的に協力することにより、日中両国のためはもとより、私達は、アジアのために、世界のために貢献することのできる、成熟した日中関係を構築しなければなりません。

 

 ところが、近年、特に政治面において日中関係は困難な状況に直面しております。直面している問題点について、ここで説明を申し上げるだけの時間も無ければ、ボアオ・アジア・フォーラムの主題でもありません。私は、アジアや世界の平和と繁栄に対して責任を持つ国家として、日中両国は共に責任ある行動を示すべきだと考えております。また、それは日中両国の多くの友人の皆様方のお考えであると信じます。

 

 私は、この二月に北京を訪問し、温家宝首相をはじめ中国政府・党の要人の皆様方と様々な問題について率直に話し合あって参りました。その結果、省エネルギーや環境問題に関するフォーラムを来月東京で実施することで合意すると共に、東シナ海のガス田協議の再開にこぎ着けました。更に、温家宝首相からは、中国の西部大開発、東北振興、北京オリンピック、上海万国博覧会に対して、日本企業の参加を求めるとのご発言もありました。また、日中両国の高校生を毎年2000人以上、相互に招聘し、ホームステイを体験してもらう事業が今年から開始されることになりました。

 

 現在、確かに日中間には様々な課題が存在していますが、今後、両国の各界各層の皆様の対話や交流の幅を拡大していくことによって、両国間の相互理解が深まり、必ずや対立を克服して、子々孫々、世々代々にわたる友好関係を築いていけるものと私は信じております。


海南島は中国の生んだ代表的な詩人の蘇東坡のゆかりの地でもあります。先生の詩の一節に「但願人長久 千里共嬋娟-ただ願うことは、人がいつまでも、千里離れていても、美しい月をそれぞれの地で同時に賞でることができるように!」という有名な言葉があります。


私たちはやがて遠くない将来に、再び日中両国が信頼しあい、尊敬しあい、協力しあう国として、互いに長く繁栄の道を辿るであろうと確信しております。

 

 

(5.結語)


以上、日本とアジアの今後の発展の方向性と幾つかの具体的な構想について提案させて頂きました。


アジア各国の皆様のご理解とご協力を得ながら、日本として東アジア全体の発展に積極的に寄与して参る決意を申し上げました。アジアのWIN-WINを祈ってご挨拶を終わります。


御静聴、ありがとうございました。