新型インフルエンザ問題について(NO.26:WHOのフェーズ6宣言)
2009年6月12日
在中国日本国大使館
11日18時(現地時間)、チャンWHO事務局長は記者会見を開き、WHO緊急委員会の勧告に基づき、新型インフルエンザの警戒水準を「フェーズ6」に引き上げる決定を行った旨発表しました。WHOの警戒水準は感染の地理的な広がりを基準に設定されており、今回の引き上げは米大陸以外の地域でも持続的感染が確認されたことに伴うもので、ウィルスの毒性や重症度の変化を意味するものではありません。また、WHOは交通規制や国境封鎖の勧告は行わないとしています。
他方で中国においては、毎日約10件のペースで新たな感染例(6月11日現在で計126例)が報告されており、今後一層の感染の拡大が予想されます。在留邦人の皆様方におかれては引き続き中国国内の状況に関する関連情報に注意しつつ、冷静に対応し、手洗い、うがいの励行、及び外出時に人混みに入る場合のマスクの着用等の感染防止対策の一層の徹底をお勧めします。
チャンWHO事務局長プレス・ステートメント(要旨)
1.幾つかの国における新型インフルエンザの拡大は、もはや明確に限定されたヒト・ヒト感染の連鎖として追跡できる段階を超え、また更なる感染の拡大が不可避となっている。これまで入手した証拠と専門家の評価によれば、現在の状況はパンデミック(世界的流行)の基準を満たしており、私は、新型インフルエンザA(H1N1)の警戒水準をフェーズ5から6に引上げることを決定した。
2.現在はパンデミックの初期にあたる。今回のパンデミックほど当初からリアルタイムで緊密に把握された例はない。世界的にみると、今回のパンデミックの重症度は中程度(moderate)である。重症度は今後変化する可能性があるが、現在のところ感染者の大多数の症状は軽く(mild)、医学的治療を施さない場合でも、しばしば回復している。
3.世界的にみて死亡例は少ない。今後死者の数や重症度が急速に変化するとは予想していない。25歳以下の若年層に感染者が多いが、重症例は30~50歳の年齢層に多い。幾つかの国では感染者の約2%が重症化し、致死性の肺炎を併発している。以上の点は季節性インフルエンザと異なる特徴である。また、喘息などの呼吸器疾患、心臓疾患、糖尿病等の罹患者に重症例が多いが、他方で重症例の3分の1から半数は若年又は中年の健常者であった。明らかに妊婦は重症化のリスクを負っている。
4.ウィルス検査能力、医療体制の整っていない途上国における今後の感染拡大、被害増大が懸念される。例えば妊婦の死亡例の99%は途上国で発生している。
5.感染のピークを過ぎたと思われる諸国も、第2波の到来に備えるべきである。感染が拡大している諸国にあっては、感染者の適切な管理に努力を集中すべきであり、感染者の検疫・検査は限定的に実施すべきである。季節性インフルエンザの生産はまもなく完了するが、その後数か月において、新型インフルエンザ・ワクチンの生産がフル稼働するものと承知している。
6.WHOとしては引き続き、交通規制や国境閉鎖の勧告は行わない。
(原文は以下を参照。
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2009/h1n1_pandemic_phase6_20090611/en/index.html ) |