1.流行性出血熱の北京市内における流行状況について
最近、北京在住の日本人留学生や郊外の工業団地より、流行性出血熱の予防接種を勧奨されているとの情報及びご相談が寄せられましたので、当館にて入手した情報とともにお知らせいたします。
当館より北京市衛生局担当部局に照会したところ、本年の患者発生数は例年どおりの低水準であり、必ず予防接種を受けなければならない状況ではなく、学校等に対し、不安がある者やネズミ等に接触するおそれのある者等に予防接種を受けるよう推奨しているが、あくまでも任意の接種であるとの回答がありました。
2.流行性出血熱について
流行性出血熱は、2004年12月から施行された改正中国伝染病防治法では、甲乙丙の3種類のうち乙類伝染病に指定され(日本の感染症法でも第4類感染症(動物由来感染症)の「腎症候性出血熱」として指定)、一般的に流行性ウィルス性出血熱の総称として使用されていますが、中国ではそのうち単一疾病名である「腎症候性出血熱」を指しているようです。同疾病は、ネズミが感染源となり、ネズミの尿等から直接あるいは寄生するダニなどを媒介してヒトに感染します。中国では一般的に農村部や地方の衛生状況があまり良くない地域に発生しています。衛生部統計では、2003年の発病率は2.46 /10万人、死亡率は0.0175 /10万人、発病者のうち死亡する者の比率は0.71%となっています。
約2週間の潜伏期間を経て、発熱、食欲不振、嘔吐、顔面のむくみ、目の充血などの症状を呈します。症状が現れた数日後から出血傾向が認められ、ごくまれに重症の場合ではショックや腎不全に陥り死亡することもあります。初期症状が風邪とよく似ていますので、上記の症状がみられる場合には直ちに医師に相談されることが肝要です。
この疾病の治療法は対症療法となり、現在、特効薬はない模様です。予防方法は、
(1)ネズミ等に近寄らないようにし、田舎の民家などへの宿泊は極力避ける
(2)ネズミ、ダニの駆除を行い、住居の衛生状況をよくする
などです。
3.予防接種ワクチンについて
中国ではワクチンが開発され、各地衛生担当部局の管理の下、予防接種が行われていますが、一般病院等では接種が行われておりません。各地衛生部局を通じ、防疫所や学校の医務室等で実施しています。
我が国では長期にわたり同疾病の発生がみられないことから、ワクチンは製造・販売されておらず、認可ワクチンはありません。このため中国のワクチンについても、我が国の承認等の対象にはなっていません。
参考 ネズミ類の日本への輸出について
ネズミは、流行性出血熱の他、レプトスピラ症(中国伝染病防治法上は乙類伝染病、日本の感染症法上は第4類感染症)の感染源ともなっています。そこで、日本の感染症法改正により、2005年9月から、ネズミ類(死体を含む)を日本へ輸出する場合は、輸出国で感染症に罹っていない旨の証明書を取得添付して、日本の検疫所に届け出ることが必要となります。
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