2005年12月12日に当地で「中国における鳥インフルエンザに関する安全対策連絡協議会」が開催されました。その概要についてお知らせします。
1.大使館より、中国における鳥インフルエンザの発生状況、予防措置、日本政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」概要(資料参照)及び中国衛生部の「インフルエンザ暴発的感染準備計画・応急予備案」概要について説明した。なお、日中ともにWHOの発表に基づいて行動計画を策定しており、対策に大きな相違は見られない。
2.現地日本人医師より、日本人が頻繁に利用する病院におけるインフルエンザの接種状況、指定病院との連携等についてまとめた報告があった。
(1)インフルエンザ予防接種については、全病院併せて数百人から千数百人が既に接種をおこなった。
(2)鳥インフルエンザ指定病院との連携については、疑いがある患者がいれば移送するなど、連携体制は整っている。
(3)鳥インフルエンザの鳥からヒトへの感染は、3000か所の鳥の集団感染があって1人感染する程度の割合でしか起こっておらず、また現在までの感染例は、病気の鳥を扱っていた人間に限られている。ヒトに感染する確率は低いものの、鳥から鳥への感染が起こっていることから、鳥からヒトへ感染することを想定して対策を取る必要がある。
3.大使館より、日系航空会社の対応について報告した。
(1)各社とも、迅速な対応ができるよう、本社に対策本部等を立ち上げて、対応策の検討、情報の収集・発信等をおこなっている。
(2)機内における感染を防ぐために、マスク・手袋を機内に常備し、空気洗浄装置には最高品質のフィルターを使い、病原菌の含まれる空気が機内に戻らないようにしている。
(3)機内食には、感染地域の鳥類を使用しない。
(4)社員に対し、インフルエンザのワクチン接種を奨励している。
(5)「フェーズ4」に入った場合、客室乗務員の健康管理を強化し、サービス時にマスク・手袋を着用し、機内の消毒をおこなう。
(6)緊急移送が必要になった場合は、関係当局と連絡をとりつつ個別に対応していくが、定期便での移送は一般旅客に感染する可能性があるので難しい。また、チャーター便については、費用の点から現実的ではない。
(7)中国への到着便で、鳥インフルエンザに類似する症状を訴える乗客がいた場合、当局に連絡し、エプロンの「沖止め」にして、当局の許可が下りるまで、乗客・荷物の降機・運び出しが禁止される。この措置は「フェーズ3」の現在でも適用されている。
(8)日本への到着便の対応については、日本の行動計画に従う。なお、飛行機が離陸した後、乗員乗客が鳥インフルエンザであることが確認された場合は、追跡調査のために関係当局に乗員乗客名簿を提出する。
4.質疑応答
(質問)感染した鳥と感染していない鳥の外見上の区別はあるのか。
(医師)鳥類の種類によっても異なる。感染した鳥であってもワクチンを打っていれば発症してもわかりにくい。一般的に、感染した鶏は鶏冠が赤くなったり、目が充血するなどの症状がみられることがある。
(質問)入国について厳しい措置がとられている国にはどのような国があるか。
(大使館)一例として、中国は、鳥インフルエンザ発生リストに基づき、該当国からの入国者に対しては厳しい検疫を行う。
(質問)日本と中国の空港でとられている検温チェックについて照会したい。
(大使館)日本も中国も赤外線検温を実施しており、中国では、赤外線検温で37.5度以上と認定された場合、再度検温をおこなう。
(質問)日本人向けタミフルの供与はいつ頃可能なのか。緊急の場合、既存のルートがあっても入手できなくなるのではないか、そうなると外務省ルートの入手が要となると思うが、時期や入手量について伺いたい。
(大使館)行動計画にもあるように、在留邦人分を確保すべく準備を進めているところだが、どれくらい、いつ頃入手できるかについては未だ決まっていない。また、タミフルは処方薬なので医師の診断が必要であり、緊急の場合を除いて平時に供与すれば当地の法令に違反することとなるだろう。
(質問)H5N1型については肉も感染するといわれており、どう対応したらよいのか。
(大使館)70度で5分間加熱することでウィルスは死滅する。但し、今のところ食品衛生の観点から特段の措置をとる必要はないと承知している。
(質問)都市部でヒトへの感染が確認された場合、渡航延期などの危険情報が出されるとの報道があるが。
(大使館)SARSの時と同様に、そのような場合には、外務省が危険情報を発出する予定となっている。
(質問)生卵や生肉を触ることで感染はあるのか。
(大使館)予防策として、手洗いを励行していただきたい。また、特に鳥類の糞尿が危ないといわれているので、靴底消毒は大切である。
(質問)家禽の範囲は如何。犬など別の動物から感染することもあるのか。
(大使館)現在まで報告されていないが、豚については感染の可能性があるといわれている。
(質問)留学生に対し、どの段階になったら、どのようなルートで緊急連絡を行なうのか。
(大使館)「フェーズ4」の段階に入ったら緊急連絡をすることになると思う。ルートは、日本の大学が派遣する学生に対しては、日本の行動計画に基づき文部科学省から日本の各大学を通じて本人への連絡があると思われる。大使館としては、HP以外に、教育部、各大学の留学生弁公室などを通じて、日本人留学生の保護を要請する。
(質問)空路の他、日中間には船舶航路もある。また国内移動に鉄道、長距離バスなどもあるが、「フェーズ4」での対応状況は。
(大使館)日中間の船舶航路の場合、密閉空間になる空路ほど感染の可能性は深刻ではないが、基本的に空路と同様の水際措置がとられるものと理解している。中国国内のバス、鉄道等の対応策については詳細には把握していないが、おそらくSARSの時と同様、感染地域の封じ込めが基本となるものと推察される。
(医師)当面ヒトからヒトへの感染はないと思ってよい。中国において、鳥から鳥への感染の報告が遅れることはあっても、鳥からヒトへの感染が起こった場合、かなり早い段階で報告されており、県や郷鎮から中央へはインターネットを通じて瞬時に情報が伝達される体制が整っている。
(質問)以前香港でSARSを体験しており、今回も非常に心配している。
(医師)過去にも大規模なインフルエンザは発生しており、地震のように、いつかは起こるが、いつ起こるかは分からない。現在は対策を強化することが唯一の方策であり、また対策は感染症全体の対策にも繋がる。パンデミックになった場合、政府だけでは対応できないので、国立感染症研究所のホームページを参照するなど、日頃から正しい情報の入手に努めていただきたい。
「資料」
日本政府「新型インフルエンザ対策行動計画」概要
2005年1 1月厚労省(在留邦人関連部分を中心に当館で抜粋・整理)
【流行規模の推計】
人口の25%が新型インフルに罹患すると想定すると受診患者数は、1,300~2,500万人
【行動計画の考え方】
WHO計画で定める6フェーズについて「計画と連携」、「サーベイランス」、「予防と封じ込め」、「医療」、「情報提供/共有」にわたり講ずべき対策を策定
*フェーズ1、2(トリ-トリ)
*フェーズ3 (トリ-ヒト) ヒトーヒト感染による拡大無、又は密接接触者等、非常に希
*フェーズ4、5(ヒトーヒト) ヒトーヒト感染が見られるが、限定された集団内
*フェーズ6 (パンデミック)一般のヒト社会の中で感染が増加、持続
【行動計画フェーズ3の概要】
~在留邦人との関係を中心に(直接関係する部分は下線)~
<予防と封じ込め>
○ HP等を通じ、感染予防の注意喚起と、感染が疑われる場合の対応を指導
○ 抗ウィルス薬タミフル確保量を決定し、備蓄開始
必要者数合計 : 2,500万人分 政府/県備蓄量2,100万、国内の流通量 : 400万
○ 在留邦人のための抗ウイルス薬を確保し、必要に応じて適切な時期に海外での供与を検討
※12月上旬時点では、詳細未定で不確実要素大
○ 発生国で養鶏施設に立ち寄った帰国者に対して、空港で靴底消毒
<医療>
○ 診療/治療にあたる病院指定
○ 指定病院に対して医療器材、診断キット、陰圧装置等確保を要請
【行動計画フェーズ4の概要】
~在留邦人との関係を中心に(直接関係する部分は下線)~
<予防と封じ込め>
○ HP等を通じ、感染予防の注意喚起と、感染が疑われる場合の対応を指導
○ 検疫・出入国者対策
・ 新型疑いとなった者は、検疫所で停留
・ 新型患者であると確定診断された場合、入院勧告し、抗ウイルス薬治療
・ 乗客が新型患者であったと確定診断された場合、国際航空/船舶会社に対し、乗客名簿等の提出を求め、乗客を調査
・ 国際航空/船舶会社から、検疫所へ有症者が乗っているとの到着前通報があった場合、機内/船内における有症者対策(有症者隔離、マスク着用、客室乗務員特定等)を指示
・ 日本国内で発生した場合は、出国カウンターにて発熱等症状者へ渡航自粛を勧告
○ 在留邦人等への対応
・ 邦人の海外渡航/退避について、WHO情報、対象国の措置等を判断し、適切に情報発出
・ 各学校に対し、発生国の日本人留学生に感染予防策を講ずるよう周知
・ 日本国内で発生した場合、不要不急の日本からの出国自粛を勧告
○ 発生地域における国民の社会活動の制限
・ 不要不急の大規模集会/活動の自粛勧告
・ 患者接触者が関係する学校等に対し、臨時休止を要請
・ 事業所に対し、有症状従業員等の出勤停止/受診を勧告
・ 住民に対し、マスク着用を勧奨
○ 抗ウィルス薬を①医療従事者、②患者との有濃厚接触かつ社会機能維持に必要な者へ予防投与
○ ワクチン接種は、供給量少の場合、医療従事者、社会機能維持者、医学高リスク者を優先
<医療>
○ 疑似患者に対し、入院勧告
○ 疑似患者接触者に対し、観察期間を定めて外出自粛要請(有症状者には抗ウィルス薬投与)
○ 各病院に対し、通常のインフル患者には、抗ウイルス薬使用を控えるよう指導
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