1.現況
(1)感染者数合計
中国におけるHIV/AIDS感染者は、急速に増加中です。2007年12月1日の世界AIDSデーにあわせて、中国政府は今年10月末までのデータを公表しました。
これまで中国政府に報告のあった感染者数:22.4万人(うち発病者は6.3万人、死亡者数2.2万人)
(昨年の報告では、感染者数は18.4万人。前年比で4万人の増加)
感染者が多い地域として、雲南、河南、広西、新彊、広東、四川の6省区が報告されています。
同時に中国政府は、まだ報告のない感染者を含めた全体数の推計も行っており、それによればHIV/AIDS感染者は、中国に約70万人存在するとされています。この推計数約70万人と実報告者数22.4万人との間には大きな開きがあり、感染者の多くは、中国政府に報告されていません。
中国におけるHIV/AIDS感染者は、急速に増加しているといえます。
(2)感染者の新規増加
2007年の新規感染者数は約5万人、エイズを原因とする死亡者数は約2万人と推計されています。新規感染者の感染原因は以下のとおりです。
:異性間の性感染45%、麻薬等42%、男性同士の性感染12%、母子感染1%
2.北京市及び天津市の現況
北京市政府によると、市内のHIV/AIDS感染者数(累計)は4,663人、北京市以外籍の住民が80%を占めています。また、今年1月から10月に新たに報告された感染者は973人で、昨年同期比で53.7%増加しています。同じく、天津市政府によると、HIV/AIDS感染者数(累計)は463人で、うち今年1月から10月に新たに報告された感染者が116人です。北京市、天津市とも、感染者数が急速に増加しています。
3.中国政府の対策
国連エイズ計画は、HIV/AIDS感染が中国で広がっており、効果的対策が無い場合は2010年までに感染者数が1000万人を超えると警告しています。そこで、中国政府は、エイズ予防治療計画(2006-10)に基づき、2010年の感染者を150万人以内に抑えることを目標として、売買血の取締まり/無償献血体制の構築、検査体制の構築、治療薬の供給、孤児や母子感染児童の福祉等について対応しています。
また2006年3月からは「エイズ予防治療条例」が施行されました。感染者への差別の禁止、学生や出稼ぎ労働者、出入国者に対するエイズ予防の宣伝、公共施設におけるコンドームの配布、母子感染予防、貧困エイズ発病者への治療薬の無料提供等が規定されています。
4.HIV/AIDS予防に関する日本の対中ODA
2006年から、中国の西部にある甘粛省蘭州への日本人専門家派遣等を通じて、HIV/AIDSに関する技術協力を行っています。
甘粛省は、確認された感染者数は多くないですが、西部の貧困省なので、予防・治療のための専門的研修を受けた医療従事者、カウンセラーが質・量ともに不足し、性感染症患者等ハイリスク集団への対応が十分ではありません。
日本人専門家の派遣、現地職員の人材育成を行うとともに、簡易検査機材等を供与しています(JICAにより3年間実施)。
(関係HP)
財団法人エイズ予防財団エイズ予防情報ネット:http://api-net.jfap.or.jp/
国連エイズ計画:http://www.unaids.org/EN/Geographical+Area/by+country/china.asp
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