9月に中日間の船舶衝突事故が発生して以来、中日間には政府から民間に至るまで緊張状態が見られた。外部からは「タカ派政治家」と呼ばれる前原誠司外務大臣はこの事件及び日本外交について談話を発表し、多く関心と議論を引き起こした。この日本の新しい外相と民主党の対中国外交の理念を明らかにするために、環球時報は日本国駐中華人民共和国大使館を通じて、前原大臣に対して書面単独インタビューを行った。
【環球時報】
貴大臣がこのたび中国「環球時報」のインタビューをお受けくださったのは,最近中日間に見られる政府から民間に至る緊張関係を修復したいという希望を,貴大臣がお持ちであるということを意味しているのでしょうか。
【前原大臣】
私の日中関係に対する考えは,互いに良き隣人として,戦略的互恵関係をより一層推進していくことが,両国及び両国民の利益に合致するというものです。日中両国の貿易・投資の相互依存関係が深まり,人的往来が活発になる中,自分自身としても,中国の13億の方々と良き友人として,戦略的互恵関係の推進に尽力していきたいと思っています。
私はこれまで20回以上,中国を訪問しました。その全てが記憶に残る訪問ですが,特に印象深いのは内モンゴル自治区における植林のための訪問です。そこでは毎年中国各地から多くのボランティアが砂漠で植林を行っており,自分もこれまで仲間ととともに550本の木を植えました。外務大臣に就任し,日本の対中政策に責任を負う立場になって,日中の先人たちが日中関係において多くの樹木を植え,育ててきたことに改めて感じ入っています。先人たちの植えた木を大切に守っていけば,私は13億の人々と必ずや良い隣人になれると思います。
残念ながら,最近発生した中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件によって,日中間では問題が必要以上に大きくなった面もあり,一時的に緊張が高まりました。先に述べたような自分の考えや思いを,中国国民の皆さんに直接説明する機会があればと思い,今回貴紙のインタビューに応じることにした次第です。
【環球時報】
しばらく前に中日間で船舶衝突にかかる危機が発生した際,貴大臣が中国の反応に対して「ヒステリー」という言葉を用いられた,と日本のメディアが報道しています。この報道は実際の状況と符合しているのでしょうか。貴大臣は本件について説明されるお考えはおありでしょうか。
【前原大臣】
今回の事件に関して,日本側は終始,双方が冷静に対処していくべきであると一貫して呼びかけてきました。日中両国は互いに「良き隣人」として,戦略的互恵関係をより一層推進していくべきです。日中両国は,世界第2位,第3位の経済大国として,地域や国際社会の平和と繁栄の実現に向けて極めて大きな責任を有しています。したがって,両国はしっかりと大局にたって,二国間のみならず,グローバルなスタンダードの中で,国際社会と調和をとりながら,どのようにして共存共栄していくかということについて,緊密に話し合っていく必要があると考えています。
【環球時報】
民主党は日中関係をどのように位置づけていますか。
【前原大臣】
民主党の政策は,政府・与党一体となって進められており,対中政策については,日中両国は一衣帯水のお互いに重要な隣国として,両国の関係はアジア太平洋地域,ひいては世界にとっても重要な関係であると位置づけ,両国間に様々な問題が生じたとしても,隣国同士として冷静に対処することが重要と考えています。
日本では昨年9月,戦後実質的に初めてとなる本格的な政権交代が行われましたが,外交の継続性,対中政策を重視しています。すなわち,中国を日本にとって極めて重要な隣国,日中関係を日本にとって最も重要な二国間関係の一つと位置づけ,引き続き戦略的互恵関係の促進につとめることです。日中間にはいくつかの懸案事項が横たわっていますが,両国首脳間の強固な信頼関係を築きあげ,懸案となっている諸問題に関し,建設的な話し合いによる問題解決を目指す考えです。
民主党は,中国との人と人との絆を大事にしてきました。12月には岡田幹事長を団長とする代表団が中国を訪問し、これまで培ってきた交流の一環として信頼関係を深めることを予定しています。今後も日中両国の宝である青年たちの交流事業や草の根交流,文化交流等,様々な交流を促進して確かな信頼関係に基づく日中の未来を築いていきたいです。
【環球時報】
貴大臣は,日本及び日本以外のメディアから,タカ派の政治家と考えられていますが,貴大臣はこの呼び方に同意しますか。貴大臣は,日本外交,特に周辺国に対する外交政策を強硬な方向にリードするのでしょうか。
【前原大臣】
私は京都大学で日本の著名な国際政治学者である高坂正堯教授に師事しました。因みに私の卒業論文のテーマは「中国の現代化」ですが,私が高坂教授の下で学んだのは,一言で言えば「現実主義」で,日本も中国もそれぞれの国益を追求して外交を展開しているという冷静な見方です。私としては「タカ派」ではなく理想主義を掲げる「現実主義者」であると考えています。
【環球時報】
中日両国の経済貿易協力は見たところ,とても力強いものになっています。貴大臣は,将来,両国の経済貿易関係が両国の政治関係に影響を及ぼすことができるとお考えでしょうか。あるいは,その逆に,それが政治的なもつれの悪影響を受けるとお考えでしょうか。
【前原大臣】
両国の経済関係は,これまでになく深まっています。日本側の統計によれば1972年には11億米ドルだった日中間の貿易総額は,2009年には2,323億米ドルと約212倍となり,日本にとって中国は輸出入ともに世界第1位,中国にとっても日本は輸入先として世界第1位,輸出先として米国に次ぐ世界第2位となっています。また,昨年中国を訪問した日本人は延べ約332万人,日本を訪問した中国人は延べ約124万人に達し,日中間の人的往来の規模も急速に拡大しています。こうした経済面での力強い関係が,日中関係全体の発展において重要な基盤となっています。また,両国の経済関係の深化は,両国関係のみならず,アジア太平洋地域,ひいては国際社会の発展にも大きく貢献しうるものです。こうした観点から日中両国は共に国際社会と協調しつつ,経済関係の更なる強化に向かって努力していくことが重要と考えます。
【環球時報】
日本のメディアにおいて,中国の急速な発展に対して様々な見方がありますが,貴大臣御自身はこの問題をどのようにお考えになっていますか。
【前原大臣】
我が国と密接な経済関係を有する中国が,国際社会と協調しつつ,経済的に発展することは,日本にとっても様々な利益をもたらし,日本にとっても得難い大きなチャンスであると考えます。また,一人あたりGDPで見ると,中国にはまだまだ成長の余地があると思います。他方,中国の急速な発展には,環境問題をはじめとする様々な経済的,社会的な問題も生じていると承知しています。私としては,中国がバランスのとれた安定的で透明性のある発展を遂げることが,日本にとっても望ましいと考えており,中国の発展がそのような方向に向かうための協力を惜しまない考えです。日中が協力すればかつてない平和と繁栄を21世紀のアジアにもたらすことができると確信しています。
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