インタビュー前、日本大使館の公式微博で資料を集めていると、多くの木寺大使の写真はにこやかなイメージで、大使は厳粛な表情、ニコリともしないという一般人のイメージと全く違っていることに気がついた。これはたぶん大使館のイメージ宣伝に必要だからだろうと思っていたが、インタビューが終わってみると、それはこの新任大使の「地」であることが分かった。彼は、まさに「楽天家」なのである。大使はカメラの前でも終始ニコニコとしていたので、我々が後で撮影した数百枚の写真から違った表情の大使の写真を選び出すことさえ、「困難」を感じるほどであった。
多くの「ご縁」がある人生は幸せ
「行楽」:大使が初めて中国を訪れたのはいつ頃か。当時と現在を比べて、中国の変化は大きいと感じるか。
木寺大使:初めて中国に来たのは、1986年に中華全国青年連合会の招へいで、北京、西安、成都、上海等を訪問した時である。当時、現在の李克強総理とお会いしたことを覚えている。今回大使として再び貴国に来て、再び李総理にお会いできたが、李総理には、私を「老朋友」と親しく呼んでいただき、このような再会に感謝している。
また、中国に来てからも以前に東京や海外で一緒に仕事をした方々とお会いできた。当時は私が彼らが中国に行く前に歓送会をしたのだが、今度は、彼らが私のために中国で歓迎会を開いてくれた。私の人生にはとても多くの貴重なご縁がある。当時と現在の中国を比べれば、変化は大きいと言えるし、多くの点でまるでタイムマシンにでも乗ってきたようである。しかし、それと同時に私は中国人に内在する一種の「活力」は、この30年が経っても変わらないと思う。ただ表面的に、当時の長安街の自転車軍団が、現在の自動車軍団に変わっただけである。
滔々と絶え間ない-グルメと美酒
「行楽」:大使は各地のグルメが大好きと伺ったが、中華料理はいかがか。
木寺大使:その意味では、貴国に大使として赴任して、、実に多くの誘惑がある。色々な公的な宴席の料理は言うまでもなく、私は、自分で町に出ておいしいものを食べるのが大好きである。例えば、最近のお気に入りは、北京の「キクラゲの和え物」で、これは大変おいしい、ほとんど毎食の必需品である(笑)。また、「抜糸地瓜」(中国風大学芋)も好物である。「抜糸」料理には色々種類があるが、大学芋が一番おいしいと思う。
「行楽」:大使は自分で料理を作るか。
木寺大使:以前東京に住んでいた時は、娘がまだ小さく、週末は私と妻でよく餃子を作って食べさせていた。ただ、私は皮で包むだけで、中のあんは妻が作っていた。もちろん、皮は買ってきたもので、達人のレベルには及ばない。今は北京での公務が忙しく、餃子もあまり作らなくなったが、よく妻と一緒にスーパーに買い物に行く。亮馬河のこの辺りのスーパーは比較的高いと気がついたので、時々、遠くの普通のスーパーにわざわざ行っている(笑)。
「行楽」:弊誌の創刊号は「北海道の海鮮」特集だった。日本のグルメと美酒で大使のお奨めはあるか。
木寺大使:(雑誌の頁をめくりながら)見ていると日本に帰りたくなる(笑)。日本には多くのおいしい料理があり、どれか一つを選ぶのは難しいが、新鮮で素材の味を生かした料理がお奨めである。例えば、海に行ったときの海の幸、山に行ったときの山の幸などである。日本食は、「食の安全・安心」に細心の注意を払っているので、中国の方々も日本に行ったら、是非新鮮な日本食を安心して楽しんで頂きたい。
また、もっと庶民の料理でラーメンもお奨めである。札幌の味噌ラーメン、九州の豚骨ラーメン、喜多方ラーメン等北から南まで色々な味があり、どれもおいしい。お酒と言えば、多くの方は日本酒をご存知だと思う。最近では、日本産のワインもおいしい。私個人としては、一番好きなのは焼酎、とくに沖縄の「泡盛」という焼酎である。私が大使公邸でお客様を迎える時には、よくこのお酒を皆さんにお勧めする。多くの中国のお客様が、その味を気に入っていただけてうれしい。
日本旅行の魅力はそれぞれ
「行楽」:日本旅行の一番の楽しみ方は何だと思うか。
木寺大使:数ヶ月前に私は、北京外国語大学で学生たちと交流し、学生たちに「日本のどこに一番行きたいか」という質問をしたところ、ある男子学生は、「東京に留学中の彼女と一緒に北海道へ行きたい」と答えてくれた。また別の男子学生は、「秋葉原が見てみたい」と言っていた。日本への旅行は人それぞれで違った魅力があると思う。ロマンある北海道、メイドカフェの秋葉原、富士山の雄大な景色、各地の「ゆるキャラ」等、日本で自分なりに楽しめる場所が見つかると思う。
「行楽」:自由旅行をする観光客の多くは鉄道の旅をするが、木寺大使はそうした経験はあるか。
木寺大使:実を言うと、私は海外での時間が長いこともあり、日本国内でゆっくり鉄道に乗って旅行をする機会は多くはなかった。しかし、鉄道の旅といえば、皆さんには是非、日本の鉄道文化の一つである「駅弁」をお奨めしたい。最近の流行は、例えば北海道のカニやイクラ弁当、九州の和牛弁当など「豪華版」が主流だが、私自身が懐かしく思うのは、以前横川で食べた釜飯弁当である。しかも、釜飯弁当の陶器の入れ物は、持って帰って旅行の記念にもなる。
一時間のインタビューは、ICレコーダーの時間表示を見なければもうそんなに時間が経ったことも感じないほどであった。とくにグルメについての話は、元々は日本の色々な料理について話を伺うつもりだったが、木寺大使の中国料理に対する賞賛やこれからの料理との出会いへの心からの期待を感じるものだった。木寺大使には、なるべく早く筆者が何度も紹介した「上海焼き饅頭」を試していただきたい。きっとお気に召すと思う。
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