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日中韓投資協定の発効に寄せて

(14.05.22)

 

駐中国日本大使館経済部長 尾池厚之

 

 

 5月17日、「投資の促進、円滑化及び保護に関する日本国政府、大韓民国政府及び中華人民共和国政府の間の協定」(通称:日中韓投資協定)が発効しました。経済分野における初めての包括的な三か国間の法的枠組みであり、投資の保護に関して包括的かつ詳細な事項を規定している本協定の発効により、日中韓三か国間の投資の促進及び三か国間の経済関係の更なる緊密化が進むことが期待されています。本協定の発効を歓迎するとともに、協定発効のためにこれまで尽力してきた三か国の関係者の努力に心からの敬意を表したいと思います。

 

 今回、日中韓三か国の間で投資協定を締結する必要性は何だったのでしょうか。協定交渉が開始する以前、日中韓三か国間では、既に日中投資協定(1989年発効)、日韓投資協定(2003年発効)、中韓投資協定(2007年改正発効)と、それぞれの二国間投資協定が締結されていました。このうち日中協定は比較的古く、一部で実際上の要請や時代の潮流と合致しない部分もあり、改訂が求められていました。しかし、それだけであれば、日中投資協定を改正するだけでも良かったのですが、日中韓三か国間の経済関係の深化が進んでいるため、三か国に共通するルールの策定が求められていたのです。日中韓三か国の経済的な結びつきは非常に深くなっており、三か国間の経済的な結びつきの核心にあるのが投資です。最近の日本の対中輸出の過半が中間財であることからも分かるように、近年の貿易は投資が引っ張っています。

 

 さらに、投資のパターンも変わりつつあります。かつては、日本や韓国の企業が中国に工場を建設して、全世界に向けて輸出するというのが基本的なパターンでしたが、最近では中国の内需を取り込もうとするサービス業も幅広く進出しています。また、韓国企業の中国投資に伴って日本の部品素材メーカーが投資をすることも増えています。さらに、中国企業による日韓企業の買収も増加してきています。このように三か国間の経済的な結びつきの深化は投資の多様化がもたらしたものであり、こうした流れを支える制度的なインフラとして、日中韓投資協定が必要とされたのです。

 

 本協定の発効により、日中韓三か国間の投資の促進及び三か国間の経済関係の更なる緊密化が進むことが期待されます。日中の経済関係への影響に注目してみると、本協定は既存の日中投資協定に比べ、保護の水準の高い協定となっており、中国でビジネスをする日本企業や、日本でビジネスをする中国企業を制度面から力強く支えることになります。具体的には、今回新たに知的財産権や公正衡平な待遇、透明性に関する条項が設けられました。また、投資家対国家の紛争解決(ISD)手続につき、現行の日中投資協定では、収用の際の補償額についての争いのみを対象としていましたが、これに対し、日中韓投資協定では、原則として協定上の全ての義務違反を対象とすることとしました。いずれの規定も、自国企業の相手国市場における活動の予見可能性を高め事業リスクを低減させるものであり、企業がより安心してビジネスを展開できる環境を創出することが期待されています。

 

 もちろん企業の投資の決定には様々な要因があります。2012年に通年で73.8億ドルにまで達した日本企業の投資も日中関係の悪化のため2013年は微減に転じ、2014年第1四半期はほぼ半減となりました。投資の決定と実行の間にはタイム・ラグがあるので、足下の減少は2012年秋の状況を反映したものだと考えられます。私としては、今回の日中韓投資協定の発効が、「投資はしっかりと保護します」というメッセージとなり、本年後半以降さらに三か国間の投資が増大していくことを期待しています。

 

 このように多くの重要な意義を有する日中韓投資協定ですが、同時に今後の課題も我々に残しています。本協定は、投資保護の対象となる協定の適用範囲を、投資後の投資家及び投資財産に限定する「保護型」となっています。しかし、グローバル経済の進展に伴い、外資の参入段階における規制等についても投資協定の中でルールを設けようとする「自由化型」の協定を指向するケースが増えてきています。実際に中国が米国やEUとの間で交渉を進めている投資協定は「自由化型」です。日中韓の間でも「自由化型」協定の必要性が高まっています。また、知的財産権保護や、締約国外資企業のビジネスマンの入国手続円滑化、パフォーマンス要求の禁止規定等の更なる強化も、積み残された課題と言えるでしょう。

 

 現在、日中韓三か国の間で経済分野における、より包括的な法的枠組み、すなわち日中韓FTAについて交渉が行われており、すでに4回の会合が行われています。交渉では投資章についてもワーキング・グループが設置され、三か国間の投資を更に促進するために活発な議論が行われています。私としては、日中韓の経済関係の更なる深化を実現するためにも、「高いレベルの投資自由化」を含む日中韓FTAの早期締結が必要だと考えます。

 


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