甘粛省夏河県博拉中学校総合校舎建設計画の竣工式典を開催
(10.05.11)
5月11日、草の根・人間の安全保障無償資金協力案件「甘粛省夏河県博拉中学校総合校舎建設計画」の竣工式が現地で行われました。竣工式には、当館より奥書記官、中国側より王硯・夏河県委書記ほかが出席しました。
(1)案 件 名:甘粛省夏河県博拉中学校総合校舎建設計画
(2)被供与団体:甘粛省夏河県人民政府
(3)案件概要:
甘粛省南部、夏河県博拉郷加科村に位置する博拉中学校において、同校の教室不足問題を解決し、同時に実験室など特別教室を新設することにより必要な学習環境を整備すべく、総合校舎1棟(3階建て、建築面積1,181㎡、普通教室×4、実験室×3、学習器材室×1、図書室×1、パソコン教室×1、職員室×2)を建設するための資金を供与する。
(4)案件の社会的背景・ニーズ:
甘粛省夏河県は、省都・蘭州市から南西へ約270kmの距離にあり、甘南チベット族自治州の北西部に位置する。同県は標高2,200mから3,600mの高地に位置しているため1年を通じて寒冷であり、年間平均気温は2.6℃と低い。また、一帯は広大な草原地帯であり、主に牧羊業が営まれている。この他、県西部には中国最大規模のチベット仏教寺院・ラープラン寺があり、国内外から多くの観光客が訪れるため、観光業も県の主要産業に数えられる。だが、当県は厳しい自然環境下にあり、主要都市からも遠く経済活動が活発でないため、産業発展の速度は緩慢で、県民平均年収は1,728元(約2万6千円)と低く、国家級貧困県の指定を受けている。
本件プロジェクト・サイトである博拉中学校は、甘南チベット族自治州の州府・合作市より南西へ約30kmの地点に位置している。同校は1979年に創設され、現在609名の生徒が在籍しているが、そ の9割以上はチベット族が占め、残る1割弱は漢族と回族により構成されている。同校は、少数民族地域における人材育成を理念とし、チベット語と普通語(中国全土の共通語)による多言語教育を行っている。
同校には平屋校舎10棟が現存し、そのうち授業が行われている校舎は5棟あり、4棟は学生宿舎、1棟は教員宿舎として使用されている。前者の5棟には、広さ56㎡の教室が4室、35㎡の教室が3室、また、元来は食堂であるが目下仮教室として利用されている80㎡の部屋が1室あり、現状、計8室が普通教室として使用されている。80㎡の部屋では2クラス約100名が同時に授業を受けているため、全体で最大9クラス分の授業を一斉に行うことができるが、同校には12のクラスがあり、常に何れかの3クラスが教室を使用できない状態にある。教室を使えない組については、体育の授業をしたり、時には教員宿舎内で授業を行ったりするなどして対処しており、同校は非常に苦しい学校運営を強いられている。
この通り教室不足問題が逼迫している状況であるため、同校には理科実験室などの特別教室を設置する余裕はなく、生徒が実践的な教育を受けられないといった問題もある。
また、2005年から夏河県は「両基(義務教育を広め、文盲を無くそうとする政策)」を促進するため、小・中学校の児童、生徒に対して学費免除や生活費支給といった措置をとっており、当校で学ぶ生徒数も2005年480名、2006年529名、2007年609名、2008年650名と増加の傾向にあり現状のままでは適正な学校教育を行い得ないことが想定される。
上記の事情に鑑み、県政府は博拉中学校において普通教室、特別教室を含む総合校舎1棟を建設することを決定したが、同県は国家級貧困県で、2006年に2億1,083万元(約32億7千万円)も支出超過するなど慢性的な財政赤字に陥っており、十分な予算措置をとることが困難であるため、日本政府に援助を要請越したものである。
(5)裨益効果:
博拉中学校の児童650名がより安全で快適な環境で学習することが可能になる。
(6)供与限度額:86,182米ドル(2007年10月24日現在:9,997,112円、644,641元相当)
(7)特記事項:
本件の竣工後、コクヨ・インターナショナル株式会社より博拉中学校に対し1,300冊(児童1人あたり2冊)のノートが寄贈されることになっている。
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