3月20日、北京市において、平成24年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件「陝西省漢中市洋県農業改善計画」の贈与契約署名式が執り行われました。当館より尾池公使、岡崎雄太一等書記官他が、中国側より丁海華・陝西漢中トキ国家級自然保護区管理局局長が出席しました。
【署名案件】
(1)案 件 名:陝西省漢中市洋県農業改善計画
(2)被供与団体:陝西漢中トキ国家級自然保護区管理局
(3)案件概要:
洋県の槐樹関鎮蔡河村と麻底村、二郎村の国家級自然保護区内で、地滑りにより被害を受けた用水路下流部分1100メートルの修繕工事と、900メートルの用水路を新規で建設する。また、サイホン管を建設し、用水路へ水を通す作業を行う。
(4)案件の社会的背景・ニーズ:
陝西省の西南部に位置する洋県は省都・西安から約190キロに位置し、面積3,200k㎡、人口43.8万人、うち少数民族が約3,900人である。都市部での平均年収は7,700元(約1,242米ドル)と低く、農村部となると1,786元(約288米ドル)と更に低くなっており、国家級貧困県に指定されている。
漢中トキ国家級自然保護区は、1983年洋県政府がトキ保護ステーションを設立したことから始まり、その後2005年7月に国務院の批准を受け国家級自然保護区に設定された。当サイトに飼育されているトキは約150羽、野生のトキは約900~1000羽生息しており、中国国内でも最大の保護区である。なお、これまで我が国が中国政府から提供を受けた5羽のトキは当サイトにおいて飼育・訓練されたトキである。
2006年~2007年にかけて起きた土砂災害により、用水路が被害を受けたため、灌漑不能の荒地となった。被害損害額は約140万元(1ムー当たり稲作収穫2,000元)にも及び、稲作が主な収入源となっている住民にとって、大きな打撃となっている。現在、被害を受けた水田のうち、350ムーについては、水が少なくても育つトウモロコシ、ナタネ等の畑に転用されているが、残り350ムーは荒地と化している。
トキの餌となる動物(ドジョウ、カエルなど)が生息する稲作水田がなくなったため、野生のトキの生存率は著しく低くなっている。
住民が稲作を続け、またトキの保護活動も続けていくためには水を引く用水路が必要不可欠となる。しかし、同管理局の財政は同財政の大部分を上級団体による交付金に頼る苦しい状態にあり、用水路建設・修築費用を捻出することが困難であるため、日本政府へ支援を要請したものである。
(5)裨益効果:
トキ自然環境保護区に水田を持つ蔡河村村民830名の灌漑面積500ムー(333,500㎡)、麻底村と二朗村村民の600名の灌漑面積200ムー(133,400㎡)が使用できるようになり、農業環境並びに食環境が改善される。
(6)供与限度額:108,603米ドル
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