3月12日、天津市において、平成26年度草の根・人間の安全保障無償資金協力案件「天津市経済技術開発区廃棄蛍光管回収処理計画」の贈与契約署名式が執り行われました。当館より井上直己・在中国日本国大使館一等書記官が、中国側より藺継尚・天津経済技術開発区環境保護協会・会長ほかが出席しました。
【署名案件】
(1) 案 件 名:天津市経済技術開発区廃棄蛍光管回収処理計画
(2) 被供与団体:天津経済技術開発区環境保護協会
(3) 供与限度額:94,508米ドル
(4) 案件概要:天津市開発区内においてエコモデル地区4か所を選出し、グリーンボックスを通して廃棄蛍光管の回収、含有水銀の無害化処理、適切な埋立処理といった一連の有効な回収システムを構築する。同時に住民に対して環境教育を行い意識向上を図る。最終的には当該経験に基づいた政策提案を政府に対して行い、他地域への普及を図る。
(5) 裨益効果:
①本件の実施により廃棄蛍光管中に含有する水銀が適切に処理されることで、土壌汚染や水質汚染を通じた人体への影響リスクを排除することができる。
②日本における廃棄蛍光管及び含有水銀の回収・適正処理の専門家を招いた研修を通じて、日本の経験も踏まえた有効な回収システム構築に貢献する。
③水俣病の経験に関するDVDを通じた環境教育やメディアと連動した広報活動により、住民の普及啓発・意識向上に貢献する。
④当該活動の経験に基づき天津市政府等に政策提案をすることが予定されており、そうした提案を通じて、同様に廃棄蛍光管による土壌汚染の問題を抱える他地域において、回収システム普及を促進させる波及効果が期待される。
(6) 案件の社会的背景・ニーズ:
①経済技術開発区は天津市北東部の渤海湾西側に位置するところ、日本企業(トヨタ、ナショナル等)を含むフォーチュングローバル500社中の76社がある、アジア太平洋経済圏の重要な窓口である。また、当該区ではリサイクルに対するエコポイントシステムが敷かれるなど、環境保護への取り組みがさかんである。
②データでは蛍光管1個あたりに0.5mgの水銀が含まれており、1㎎の水銀が地下に流入すると360tの水質汚染につながるといわれている。こうしたことから、水銀を含む蛍光管は「国家危険廃棄物リスト」に入っており指定業者に持ち込まなければならないが、同市の回収体系は不完全で十分にケアされていない。
③また中国国内において蛍光管の分別回収処理のシステムがない上、住民の水銀に対する知識不足や意識の低さから、蛍光管が適切に分別されていないため、水銀を含有する蛍光管がそのまま生活ごみとして処理されてしまい、埋め立てられている。その結果、水質・土壌汚染や健康被害が引き起こされることが懸念されているところ、水銀の有害性を理解し、蛍光管の正しい処理の必要性について教育し、住民の当該分野に対する意識を高め、回収システムを確立することが必要とされている。
④被供与団体は回収ノウハウ及び、本件支援を実施し得るに足る十分な実績能力を有するものの、当該資金を捻出することができないため、草の根無償資金協力による支援要請に至った。 |