【対中ODA40周年】令和元年度 開発協力プレスツアーの実施(その1:北京市)

2019/11/11
 当館は対中ODA40周年を記念し,2019年10月10日(木)から14日(月)にかけて,北京市,山西省大同市,重慶市において中国メディア向けODAプレスツアーを実施し,これに7新聞社・雑誌社が参加しました。このプレスツアーは対中ODAに関し中国の人々にその成果を紹介し,日中関係において重要な役割を果たしていることを理解していただくためのものです。

 40年前の1979年,大平正芳総理の訪中を契機に対中ODAが開始されました。以来,対中ODAは中国の改革・開放政策の維持・促進に貢献するとともに,日中関係を下支えする強固な基盤を形成してきました。

 昨年10月の安倍総理訪中の際、中国の改革開放40周年を契機に、対等なパートナーとして新たな次元の日中協力を推進するとの考えのもと、対中ODAの終了を発表しました。今後,日中両国政府は新たな次元の協力として,開発分野における人材交流や地球規模課題に関する協力の実施につき検討していきます。
 

10月10日(木)

 一日目,記者は,JICA中国事務所において40年にわたるODAの歴史につきブリーフィングを受け後,無償資金協力により建設された中日友好医院及び中日青年交流中心(中日青年交流センター)を視察しました。また,対中ODAプロジェクトに携わる関係者と懇談しました。
 
★中日友好医院
 1979年,大平正芳総理が訪中した際に、中国の現代化病院の建設することに日本が協力することを表明しました。

 1981年1月及び8月,北京において中日友好医院建設・施工の無償資金協力の交換公文を締結し,164.3億円を供与しました。1984年7月2日,竣工式を実施し、10月23日に正式に開院しました。当時の病床数は1300床で、当時は中国で最大規模の病院でした。1981年から2021年にかけて,日本から専門家の派遣,青年海外協力隊員の派遣、訪日研修,機材供与,中西部の医療技術者の研修等,多くの技術協力プロジェクトを実施しています。またJICAによる医療分野の帰国研修員は、2006年から中国各地の貧困地域への無料巡回診療(義診)を実施しており、中日友好医院は事務局をつとめています。

 周軍書記兼副院長と彭明強副院長から同医院は今年設立35周年を迎えており,ODAプロジェクト以外にも,民間・学術レベルで日本医師会,東京大学,京都大学,順天堂大学,国際医療福祉大学,富山大学,金沢医科大学等多くの大学や学会,民間企業との協力・交流が続いており,同医院が日中医学交流の拠点として大きな役割を果たしていることが紹介されました。
 

中日友好病院

シンボルマークは一衣帯水の富士山と長城

周軍書記兼副院長と彭明強副院長が
記者に医院の日中協力の状況を説明

孟華川・国際交流合作弁公室
日本プロジェクト主幹からの説明

中日友好医院で活躍する青年海外協力隊
岩崎春香看護師
 
  
★中日青年交流中心
 1984年の中曽根康弘総理(当時)と胡耀邦中国共産党中央委員会総書記(当時)による提案により,1986年から1990年にかけて無償資金協力(103.91億円)により建設されました。世紀劇院,教育研究楼,プール等から構成されています。

 馬興民・中日青年交流中心主任及び洪桂梅同副主任から,同中心が1990年の完成以降,公演,研究,スポーツの面で,日中間のみならず国際的な交流活動を実施していること,特に,1999年から実施された日中緑化交流基金事業では,日本の青年団体計30団体と協力し,中国の42,000ヘクタールの土地の緑化・環境保全に尽力し,大きな成果を挙げていることが紹介されました。
 

中日青年交流中心

過去の式典の様子

馬興民・中日青年交流中心主任及び
洪桂梅同副主任から説明を受ける記者

1986年以降の日本や各国との協力
及び交流の歩みを紹介(同中心2階)
日中緑化交流基金 内モンゴル自治区库布齐緑化プロジェクトの成果
(協力団体:中華全国青年連合会・日本青年団協議会等)
日中緑化交流基金 内モンゴル自治区库布齐緑化プロジェクトの成果
(協力団体:中華全国青年連合会・日本青年団協議会等)
日中緑化交流基金 内モンゴル自治区库布齐緑化プロジェクトの成果
(協力団体:中華全国青年連合会・日本青年団協議会等)
 
 
★ODA関係者との懇談
 一行はまた,現役のJICA専門家及び青年海外協力隊員,日本のNGO関係者,JICA訪日研修事業の経験者と懇談を行いました。実際にプロジェクトに携わる関係者から,ODAプロジェクトを通じた日中間の人と人とのつながりが紹介されました。
 

ODA関係者との記念撮影

10月11日(金)

二日目は北京市城市排水集団有限公司高碑店汚水処理場,北京地下鉄1号線,北京紅丹丹教育文化交流中心を視察しました。
 
★北京城市排水集団有限公司高碑店汚水処理場
 北京市都市汚水処理場の中で最大(毎日の処理能力は100万m2/日。北京市中心部の汚水処理能力の約4割に相当。)である同汚水処理場は,全国でも最大規模の汚水処理場であり,北京中心部及び東部工業部の計9,661ヘクタールの範囲の汚水処理を行っています。対象人口は240万人,処理場面積は68ヘクタールに上ります。

 処理場の建設は二期に分けて実施され,第一期(1990年着工,1993年通水)の50m2/日の処理能力を有する施設建設は,第二次円借款によって実施されました。総投資額は66.9億円(5.24億人民元)に上り,うち日本の円借款利用は26.4億円になります。

 2010年3月から2013年2月にかけては,技術協力「汚水処理場改造・運営改善プロジェクト」を実施しました。

高碑店汚水処理場

事業概要について説明する張志淵総経理
 
★北京地下鉄1号線(復興門駅~八王墳)
 自動車の増加による長安街の交通の混雑を緩和することを目的に,1988、89年度に第一期40億円,1991~94年度に第二期プロジェクトとして156.78億円が、復興門駅から八王墳駅まで12kmの地下鉄道,10駅を建設し,車輌製造や車輌186輛の購入のために供与されました。

当時の様子

現在の様子
 
★北京紅丹丹教育文化交流中心・北京市紅丹丹視覚障害者文化サービスセンター(以下、「紅丹丹」)
 2009年JICAの草の根技術協力として,日本点字図書館による技術協力(映画副音声製作技術の研修等)を実施しました。また,2011年には当館草の根・人間の安全保障無償資金協力として録音室,サーバー室を整備し,またDAISY録音図書再生機(目次から聴きたい章や節,任意のページに飛ぶことができる再生機)10台を提供し、通学できない視覚障害学生の基礎教育を支援しました。当館は2015年にも,視覚障害者のためのオンライン図書検索・閲覧空間の開設及び運営を支援し,また点字図書館との技術研修会開催を支援しました。同中心は社会的な寄付により運営されており、また多くのボランティアが録音図書製作に尽力しています。

 紅丹丹の鄭暁潔主任は、紅丹丹が日本の点字図書館との協力により製作した恭王府の点字ガイドブックなどを紹介し、日本との技術交流を通じて視覚障害者のニーズに基づいたきめ細かいサービスを提供する大切さに気付いたと述べられました。また、DAISY録音図書再生機の供与は、視覚障害を持つ学生である董麗娜氏が中国伝媒大学においてアナウンスと司会を学ぶ上で大変役に立ったと紹介しました。DAISY録音図書再生機により、董麗娜氏は健常学生とともに授業に参加するという夢をかなえ、また全学士課程を修了することができました。董麗娜氏は現在プロのアナウンサーになっており、現在中国の7つの盲人学校に向けて「声の夢」プロジェクトを行うことにより、視覚障害を持つ青年がアナウンスの仕事をする可能性を切り開いたとのことです。心目図書館総コーディネーターの張新莉氏は心目図書館の活動や成果などについて説明しました。また、ボランティアとして活動する張晨氏と劉彤氏は録音図書製作制作の難しさや楽しさについて語り,実際にサービスを利用する視覚障害者である肖煥義氏と厳金栄氏は紅丹丹の活動により読書が楽しめるようになったと、これまで聴いた本の内容についていきいきと語りました。
 
 紅丹丹は中国で初めて視覚障害者向けの録音図書を扱う民間図書館「心目図書館」を開設しました。
 編集室の壁には、心目映画館の創始者である王偉力氏と日本の点字図書館田中館長が「心目図書館」のプレートをかかげる写真や、「中日友好音声作品録音室」開設時の写真が飾られていました。
 録音室にて視覚障害者の学校向けのオンライン授業を行う董麗娜アナウンサー
(視覚障害者)

記者に説明する鄭暁潔主任
 

実際にサービスを利用する
視覚障害者である肖煥義氏と厳金栄氏