天皇誕生日祝賀レセプションの開催(2022年3月30日)
令和4年3月30日
3月30日、在中国日本国大使公邸において、天皇誕生日祝賀レセプションを開催しました。
日中国交正常化50周年という大きな節目の一年を迎える中、約380名の招待客の皆様がお越しになり、弓道演武、バイオリン・チェロ・ピアノの音楽演奏、お茶のお点前、渡邉聡志・大使公邸料理人による寿司パフォーマンスなど、様々な形で日本文化を楽しんでいただきました。
今回のレセプションでは、日中両国の国交正常化以来50年間の歩みを振り返る記念パネルが展示されるとともに、垂大使が写真家として撮影した日中両国の風景写真も展示されました。
垂大使は挨拶の中で、唐の時代の中国に渡り、恵果和尚から仏教を学んだ空海や、北京冬季オリンピックのスノーボードで金メダルを獲得した蘇翊鳴選手と佐藤康弘コーチのエピソードを紹介しつつ、日中両国間の「助け合い」の人間ドラマについて語りました。また、日中国交正常化50周年を念頭に、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していく必要性を述べました。
垂大使による挨拶全文は以下のとおりです。
日中国交正常化50周年という大きな節目の一年を迎える中、約380名の招待客の皆様がお越しになり、弓道演武、バイオリン・チェロ・ピアノの音楽演奏、お茶のお点前、渡邉聡志・大使公邸料理人による寿司パフォーマンスなど、様々な形で日本文化を楽しんでいただきました。
今回のレセプションでは、日中両国の国交正常化以来50年間の歩みを振り返る記念パネルが展示されるとともに、垂大使が写真家として撮影した日中両国の風景写真も展示されました。
垂大使は挨拶の中で、唐の時代の中国に渡り、恵果和尚から仏教を学んだ空海や、北京冬季オリンピックのスノーボードで金メダルを獲得した蘇翊鳴選手と佐藤康弘コーチのエピソードを紹介しつつ、日中両国間の「助け合い」の人間ドラマについて語りました。また、日中国交正常化50周年を念頭に、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していく必要性を述べました。
垂大使による挨拶全文は以下のとおりです。
御列席の皆様、
本日は御多忙の中、天皇誕生日祝賀レセプションにお越しいただき、誠にありがとうございます。
昨年と同様、本レセプションでは、皆様に我が公邸の自慢の桜を楽しんでいただきたいと思っていましたが、3月になっても雪が降るような肌寒い天気が続き、ここ数日、やきもきしていました。その後、我々の願いが叶ったのか、先週の日曜日に公邸の桜はようやく咲き始め、何とか皆様をお迎えすることができるようになりました。
新型コロナウイルスの影響により、本年も規模を縮小しての開催となりましたが、こうして皆様とこの日を迎えられたことをとても嬉しく思います。
さて、本年、日中両国は、国交正常化50周年という大きな節目を迎えています。大サロンにはこの50周年を記念した記録写真の数々を展示していますが、一枚一枚の写真がこれまでの両国の歩みを雄弁に語りかけています。
日本と中国の共通の言葉に「温故知新」という言い方がありますが、50周年の機に、日中両国の歴史の中の一つのエピソードを振り返ってみたいと思います。そこには「助け合い」の人間ドラマがありました。
今から約1,200年ほど前、空海という日本の若い僧が唐の時代の中国に渡り、長安(現在の西安)の青龍寺で高僧恵果和尚から密教を教わり、日本の高野山に持ち帰り、日本仏教の基礎を打ち立てました。
その後、中国では、混乱の歴史の中で、密教の教義も青龍寺も消失しましたが、青龍寺の方は1980年代に日本の寄進もあり、復興されました。
昨年、私が西安を訪問した際、その青龍寺の住職に対し、どこで仏教の教えを学んだのかと尋ねたところ、住職はとても嬉しそうに「高野山」と答えてくれました。
かつて日本が中国から学んだ仏教を、今や中国の僧が日本の高野山で学んでいる。これは一つのエピソードに過ぎませんが、日本と中国では、時代を超えた「助け合い」の人間ドラマが多々生まれてきました。
こうしたエピソードは過去のことだけではありません。
つい最近も、北京冬季オリンピックを舞台にした人間ドラマがありました。スノーボードで金メダルを獲得した蘇翊鳴選手と佐藤康弘コーチが、共に涙して抱きあった姿は、中国でも日本でも、多くの人の胸を打ちました。
もちろん、日中両国は、隣国であるがゆえに意見の違いや摩擦が起きるのは当然のことであります。だからこそ、私たちは、主張すべきは主張し、率直に議論することを通じて、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していく必要があると考えています。
50年前に日中国交正常化を実現した周恩来総理は、「自国の利益を守ることは当然のことであるが、他国の利益も考えなければならない」と述べたことが知られています。相手のことを思いやる精神を改めて学び合い、立場が異なる相手であっても誠実に意思疎通を重ねる。これこそ、今、私たちに求められているのではないでしょうか。
御列席の皆様、
私たちがこの場に集う今も、ウクライナでは、ロシアの侵攻を機に戦禍が続き、一般市民を含む多くの犠牲が生まれています。私自身、改めて平和への思いを強くするとともに、国際社会と共にウクライナを支援していく決意を新たにしています。この後、有志による音楽演奏では、私たちの平和への祈りを捧げたいと思います。
新型コロナウイルスの影響がいまだに続いているため、日中間の往来はおろか、中国国内の往来ですら大きな制約を受けています。私は外交官であるとともに、写真家であります。私がこれまで撮りためてきた日中両国の風景写真も配置させていただきました。多くの人の胸を打つ日中両国の美しい風景を御覧いただき、自ら足を運んだかのような気分を少しでも味わっていただければ、この上ない幸せです。
結びに、天皇陛下のお誕生日をお祝いし、御列席の皆様の御多幸と日中関係の更なる発展を祈念申し上げて、私からの挨拶とさせていただきます。
御清聴、ありがとうございました。
本日は御多忙の中、天皇誕生日祝賀レセプションにお越しいただき、誠にありがとうございます。
昨年と同様、本レセプションでは、皆様に我が公邸の自慢の桜を楽しんでいただきたいと思っていましたが、3月になっても雪が降るような肌寒い天気が続き、ここ数日、やきもきしていました。その後、我々の願いが叶ったのか、先週の日曜日に公邸の桜はようやく咲き始め、何とか皆様をお迎えすることができるようになりました。
新型コロナウイルスの影響により、本年も規模を縮小しての開催となりましたが、こうして皆様とこの日を迎えられたことをとても嬉しく思います。
さて、本年、日中両国は、国交正常化50周年という大きな節目を迎えています。大サロンにはこの50周年を記念した記録写真の数々を展示していますが、一枚一枚の写真がこれまでの両国の歩みを雄弁に語りかけています。
日本と中国の共通の言葉に「温故知新」という言い方がありますが、50周年の機に、日中両国の歴史の中の一つのエピソードを振り返ってみたいと思います。そこには「助け合い」の人間ドラマがありました。
今から約1,200年ほど前、空海という日本の若い僧が唐の時代の中国に渡り、長安(現在の西安)の青龍寺で高僧恵果和尚から密教を教わり、日本の高野山に持ち帰り、日本仏教の基礎を打ち立てました。
その後、中国では、混乱の歴史の中で、密教の教義も青龍寺も消失しましたが、青龍寺の方は1980年代に日本の寄進もあり、復興されました。
昨年、私が西安を訪問した際、その青龍寺の住職に対し、どこで仏教の教えを学んだのかと尋ねたところ、住職はとても嬉しそうに「高野山」と答えてくれました。
かつて日本が中国から学んだ仏教を、今や中国の僧が日本の高野山で学んでいる。これは一つのエピソードに過ぎませんが、日本と中国では、時代を超えた「助け合い」の人間ドラマが多々生まれてきました。
こうしたエピソードは過去のことだけではありません。
つい最近も、北京冬季オリンピックを舞台にした人間ドラマがありました。スノーボードで金メダルを獲得した蘇翊鳴選手と佐藤康弘コーチが、共に涙して抱きあった姿は、中国でも日本でも、多くの人の胸を打ちました。
もちろん、日中両国は、隣国であるがゆえに意見の違いや摩擦が起きるのは当然のことであります。だからこそ、私たちは、主張すべきは主張し、率直に議論することを通じて、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していく必要があると考えています。
50年前に日中国交正常化を実現した周恩来総理は、「自国の利益を守ることは当然のことであるが、他国の利益も考えなければならない」と述べたことが知られています。相手のことを思いやる精神を改めて学び合い、立場が異なる相手であっても誠実に意思疎通を重ねる。これこそ、今、私たちに求められているのではないでしょうか。
御列席の皆様、
私たちがこの場に集う今も、ウクライナでは、ロシアの侵攻を機に戦禍が続き、一般市民を含む多くの犠牲が生まれています。私自身、改めて平和への思いを強くするとともに、国際社会と共にウクライナを支援していく決意を新たにしています。この後、有志による音楽演奏では、私たちの平和への祈りを捧げたいと思います。
新型コロナウイルスの影響がいまだに続いているため、日中間の往来はおろか、中国国内の往来ですら大きな制約を受けています。私は外交官であるとともに、写真家であります。私がこれまで撮りためてきた日中両国の風景写真も配置させていただきました。多くの人の胸を打つ日中両国の美しい風景を御覧いただき、自ら足を運んだかのような気分を少しでも味わっていただければ、この上ない幸せです。
結びに、天皇陛下のお誕生日をお祝いし、御列席の皆様の御多幸と日中関係の更なる発展を祈念申し上げて、私からの挨拶とさせていただきます。
御清聴、ありがとうございました。