垂大使が日中経済知識交流会主催「知識交流、未来を見据えて」-日中国交正常化50周年記念座談会に出席(2022年11月28日)
令和4年11月28日
11月28日、垂大使は、日中経済知識交流会主催の「知識交流、未来を見据えて」-日中国交正常化50周年記念座談会にオンラインで出席し、挨拶を行いました。
開幕式では、垂大使のほか、陸昊・中国国務院発展研究センター主任、福井俊彦・キヤノングローバル戦略研究所理事長(元日本銀行総裁)、孔鉉佑・駐日中国大使(オンライン)及び伊澤正・日中経済協会理事長が挨拶を行い、当館からは田中英治公使が出席しました。
垂大使の挨拶は以下のとおりです。
日中経済知識交流会関係者の皆様、こんにちは。
日中国交正常化50周年を記念して、本日の座談会が開催されますことをお喜び申し上げるとともに、一言御挨拶を申し上げます。
まず始めに、今月17日に、約3年振りに日中首脳会談がバンコクで成功裏に開催されました。岸田政権の対中方針は、日中両国の間に摩擦や立場の相違があっても不断に意思疎通を行い、主張すべきは主張しながらも「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していくというものであります。ただ、これまで、この「建設的関係」の部分が必ずしも十分にフォーカスされていませんでしたが、今回の首脳会談を通じてこの点が明確になったことが大きな成果であると考えています。例えば、安全保障分野の協力に加え、経済・国民交流分野の協力について、環境・省エネを含むグリーン経済や医療・介護・ヘルスケアの分野等での協力、青少年交流を含む国民交流を後押ししていくことで一致しました。また、日中ハイレベル経済対話及び日中ハイレベル人的・文化交流対話の早期開催も合意されました。
日本から見れば、中国の巨大な市場は非常に魅力的であり、中国の改革開放以降、多くの日本企業が中国に進出し、その拠点数は今や3万以上にも上っていますし、今月開催された上海・輸入博覧会においても、このコロナの状況にも関わらず約400社の日本企業が出展しました。また、中国経済の技術革新、社会実装の速さ、デジタル普及等は目を見張るものがあります。こうした「実物大」の中国を直視し、客観的に評価することが重要であります。日本企業としては、中国市場における試験的な取組をグローバル市場の獲得につなげる、また、中国において急速に進む、グリーン、デジタル等の分野での技術や成長モデルを積極的に吸収するといった「攻め」の姿勢を忘れてはなりません。
一方で、中国側の課題についても、現場の声を2点ほど率直に申し上げたいと思います。
一つはいわゆる「デカップリング」についてです。昨今、中国では「デカップリング」に反対の声が大きく上がっています。それは正しいと思いますし、日本も中国とのデカップリングを考えている訳ではありません。そもそもデカップリングは現実的でありません。しかしながら、中国は他国のデカップリングや(中国を)サプライチェーンから排除しようとする動きには極めて敏感である一方で、内外無差別を国際的に強く主張する中国自身が、「自立自強」のサプライチェーンの構築を強く推し進める中で、むしろ「内外差別」とも言える状況を自ら作り出しているような動きが昨今見え隠れしています。安全で信頼できるサプライチェーンの構築を目指すことには異論はありませんが、政府調達からの排除や国家標準などを通じて、外資、とりわけ日本企業に対し、強制的に技術移転を求めることは自由競争の精神に反するとともに、中国の事業環境の信頼を大きく失わせる結果になることを強く懸念します。
第2点目は、コロナ防疫措置による数々の移動制限です。ここ3年間の日本から中国への投資は顕著に減少傾向にあります。この原因の一つはコロナ防疫措置による影響と考えられます。現在の状況がさらに長く続けば、日中間の経済的な結びつきが薄れ、両国経済のみならず世界経済にも大きな影響が及ぶことを強く懸念します。外国からの入国時の隔離措置が未だ撤廃されておらず、企業の本社幹部による中国出張を拒んでいます。これまでの2年間で私が出迎えた日本から出張してきた本社幹部はたった1人のみでした。中国の現場をリアルに訪問できない状況下では企業は大きな投資を決定することはできないでしょう。今後の対中投資に大きく影響することを懸念しています。また、中国・国内の移動制限(ポップアップ政策)も、中国で活動する日本企業の生産・営業活動に大きなマイナスの影響を与えています。例えば、北京から他の省に出張に出た企業の駐在員が数週間、酷いケースでは1ヶ月以上も北京に戻れないなど、日本企業から多くの報告と相談を受けているのが実情であります。
日中経済知識交流会は、1981年から40年以上にわたり、経済分野の課題を巡って長期的・総合的な視点から、双方の知識や経験を交流してこられました。これまで果たしてこられたご貢献は極めて大きく、また、日中関係の未来を見据えるにあたり、知識交流会の役割は今後とも益々重要になると確信しています。そのためにも、今申し上げた課題について、現場の状況を踏まえ、関係者の皆様で大いに議論されることを期待しております。
最後になりますが、本日の座談会が成功裏に開催されますこと、そして皆様の益々の御発展と御活躍、日中関係の更なる発展を祈念して、私の挨拶とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。
開幕式では、垂大使のほか、陸昊・中国国務院発展研究センター主任、福井俊彦・キヤノングローバル戦略研究所理事長(元日本銀行総裁)、孔鉉佑・駐日中国大使(オンライン)及び伊澤正・日中経済協会理事長が挨拶を行い、当館からは田中英治公使が出席しました。
垂大使の挨拶は以下のとおりです。
日中経済知識交流会関係者の皆様、こんにちは。
日中国交正常化50周年を記念して、本日の座談会が開催されますことをお喜び申し上げるとともに、一言御挨拶を申し上げます。
まず始めに、今月17日に、約3年振りに日中首脳会談がバンコクで成功裏に開催されました。岸田政権の対中方針は、日中両国の間に摩擦や立場の相違があっても不断に意思疎通を行い、主張すべきは主張しながらも「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していくというものであります。ただ、これまで、この「建設的関係」の部分が必ずしも十分にフォーカスされていませんでしたが、今回の首脳会談を通じてこの点が明確になったことが大きな成果であると考えています。例えば、安全保障分野の協力に加え、経済・国民交流分野の協力について、環境・省エネを含むグリーン経済や医療・介護・ヘルスケアの分野等での協力、青少年交流を含む国民交流を後押ししていくことで一致しました。また、日中ハイレベル経済対話及び日中ハイレベル人的・文化交流対話の早期開催も合意されました。
日本から見れば、中国の巨大な市場は非常に魅力的であり、中国の改革開放以降、多くの日本企業が中国に進出し、その拠点数は今や3万以上にも上っていますし、今月開催された上海・輸入博覧会においても、このコロナの状況にも関わらず約400社の日本企業が出展しました。また、中国経済の技術革新、社会実装の速さ、デジタル普及等は目を見張るものがあります。こうした「実物大」の中国を直視し、客観的に評価することが重要であります。日本企業としては、中国市場における試験的な取組をグローバル市場の獲得につなげる、また、中国において急速に進む、グリーン、デジタル等の分野での技術や成長モデルを積極的に吸収するといった「攻め」の姿勢を忘れてはなりません。
一方で、中国側の課題についても、現場の声を2点ほど率直に申し上げたいと思います。
一つはいわゆる「デカップリング」についてです。昨今、中国では「デカップリング」に反対の声が大きく上がっています。それは正しいと思いますし、日本も中国とのデカップリングを考えている訳ではありません。そもそもデカップリングは現実的でありません。しかしながら、中国は他国のデカップリングや(中国を)サプライチェーンから排除しようとする動きには極めて敏感である一方で、内外無差別を国際的に強く主張する中国自身が、「自立自強」のサプライチェーンの構築を強く推し進める中で、むしろ「内外差別」とも言える状況を自ら作り出しているような動きが昨今見え隠れしています。安全で信頼できるサプライチェーンの構築を目指すことには異論はありませんが、政府調達からの排除や国家標準などを通じて、外資、とりわけ日本企業に対し、強制的に技術移転を求めることは自由競争の精神に反するとともに、中国の事業環境の信頼を大きく失わせる結果になることを強く懸念します。
第2点目は、コロナ防疫措置による数々の移動制限です。ここ3年間の日本から中国への投資は顕著に減少傾向にあります。この原因の一つはコロナ防疫措置による影響と考えられます。現在の状況がさらに長く続けば、日中間の経済的な結びつきが薄れ、両国経済のみならず世界経済にも大きな影響が及ぶことを強く懸念します。外国からの入国時の隔離措置が未だ撤廃されておらず、企業の本社幹部による中国出張を拒んでいます。これまでの2年間で私が出迎えた日本から出張してきた本社幹部はたった1人のみでした。中国の現場をリアルに訪問できない状況下では企業は大きな投資を決定することはできないでしょう。今後の対中投資に大きく影響することを懸念しています。また、中国・国内の移動制限(ポップアップ政策)も、中国で活動する日本企業の生産・営業活動に大きなマイナスの影響を与えています。例えば、北京から他の省に出張に出た企業の駐在員が数週間、酷いケースでは1ヶ月以上も北京に戻れないなど、日本企業から多くの報告と相談を受けているのが実情であります。
日中経済知識交流会は、1981年から40年以上にわたり、経済分野の課題を巡って長期的・総合的な視点から、双方の知識や経験を交流してこられました。これまで果たしてこられたご貢献は極めて大きく、また、日中関係の未来を見据えるにあたり、知識交流会の役割は今後とも益々重要になると確信しています。そのためにも、今申し上げた課題について、現場の状況を踏まえ、関係者の皆様で大いに議論されることを期待しております。
最後になりますが、本日の座談会が成功裏に開催されますこと、そして皆様の益々の御発展と御活躍、日中関係の更なる発展を祈念して、私の挨拶とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。