垂大使 新年のご挨拶(2023年1月4日)

令和5年1月4日
 謹んで新年のお喜びを申し上げます。
 
 昨年は日中国交正常化50周年という大きな節目の年でした。昨年の年始のご挨拶では、こうした節目の年に、当地において様々な分野で活躍されている日本人の皆様、そして日本と縁を持つ中国の方々の力も借りながら、日中両国の対話と交流の促進に全力を尽くしていきたいと抱負を述べさせていただきましたが、実際、新型コロナウイルス感染症等の厳しい状況にもかかわらず、多くの友人のご尽力もあり、様々な有意義な行事が中国各地で実施されました。
 
 北京においては、9月に中国日本商会を中心とする実行委員会の主催で記念行事を実施いただき、多くの中国人の方に日本の文化を知ってもらう機会となりました。また、11月には大使館で記念レセプションを開催し、日中関係にゆかりのある多くの方々にご参加いただくことができました。
 
 日中国交正常化以来の50年を振り返れば、日中関係は必ずしも常に順風満帆というわけではありませんでした。とりわけ、新型コロナウイルス感染症により、日中間の往来や交流が止まる中、対話と意思疎通の欠如により、現在の日中関係も、数々の困難と挑戦に直面しています。
 
 他方、少しずつではありますが、前向きな要素も出てきています。昨年11月には約3年ぶりに対面での日中首脳会談がバンコクで開催されました。岸田政権の対中政策は、両国間に摩擦や立場の相違があっても不断に意思疎通を行い、主張すべきはしっかりと主張し、共通の諸課題については共に協力していく「建設的かつ安定的な関係」を構築するというものです。今回の首脳会談において、両首脳が、環境・省エネを含むグリーン経済、医療・介護・ヘルスケアの分野等での実務協力の推進や、国民交流の再活性化で一致したことは、これまで必ずしも十分にフォーカスされてこなかった「建設的」な関係の側面を明確にする意味で、大きな成果であったと考えます。
 
 日中両国は引っ越しができない「永遠の隣人」であり、隣国である以上、一定の摩擦や立場の相違があることは極めて正常なことです。重要なのはあらゆるレベルで対話と意思疎通を続けることであり、相手の政策や主張が不愉快であるからと言って、対話や意思疎通を止めてはなりません。
 
 むしろ、困難な局面が続く時こそ、積極的に対話や意思疎通を行い、日中両国の国民が等身大で相手のことを理解し合うことが重要です。政府間の対話も勿論重要ですが、民間交流を通じて、国民レベルの相互理解を増進し、相互信頼を醸成していくことこそが、日中関係の「王道」であると、私は信じています。
 
 昨年の日中国交正常化50周年に引き続き、本年も日中平和友好条約締結45周年を迎えます。日中関係の未来を見据えながら、こうした節目の年を契機に日中関係の安定的な発展に弾みをつけていくことができるように、引き続き全力を尽くして参ります。
 
 また、大使館が取り組むべき最優先事項が(1)在留邦人の安全確保と支援、(2)日系企業支援の2つであることに変わりはありません。昨年11月にはこうした取り組みに長年従事されてきた中国日本商会と北京日本倶楽部に対して在外公館長表彰を授与させていただきました。引き続き、両団体と一丸となって、在留邦人の皆様の中国滞在がより充実したものになるよう努めて参ります。
 
 現在、中国国内では新型コロナウイルス感染症が急速に拡大しており、在留邦人の皆様も不安に感じておられることと思います。当館では、感染状況に応じた防疫措置をしっかりととりつつ、大使館として責務を果たしていく考えです。何かお困りのことがあればいつでも御相談いただけますと幸いです。
 
 最後になりますが、新しい年における皆様の御健康と御多幸をお祈りして、新年の挨拶とさせていただきます。