 |
(图片来源:南方周末) |
南方週末記者 張哲 師小涵
昨年末、新任の木寺昌人・駐中国日本国大使が北京に着任したのは、日中関係がちょうど近年来で最も困難な時期だった。2012年を通して、日中両国は尖閣諸島(中国語記事原文では「釣魚島」、以下同)問題が惹き起こした一連の争いのなかで、互いに相手の出方を探り、力比べし、相手の行く手を塞いだ。「日中両国は必ず一戦する」との言葉が、しばしば新聞やネット上に見かけられ、日中両国の指導者の交代も、日中両国関係の破局に新たな不確定要素を加えた。
危機に際して任命された木寺大使は赴任後すぐ、中国の外交及び各界の関係者に続けざまに面会した。この間、日本の政界要人の訪問も続き、凍りついた日中関係の中にあって、わずかに暖かさを取り戻す気配を感じさせた。
新大使は現下の日中関係をいかに分析しているのか? 2013年2月1日、木寺昌人大使は駐中国日本国大使館で、南方週末の記者による単独インタビューを受けた。
「これは両国国民の利益に合致しない」
南方週末:最近、山口那津男・公明党代表、河野洋平・前衆議院議長、村山富市・元総理等の政界要人が相次いで訪中した。大使は、訪問の成果について彼らと意見交換したか。この一連の訪問を大使はどう評価するか。
木寺大使:日中関係が現在厳しい局面にある中、こうした中国と縁を持つ方々がこうしたレベルで意思疎通を行うことは、日中関係にとって有意義であると考えている。昨日、村山元総理が北京を離れる際に、私も空港まで見送りをした。村山元総理は、今回中国側と意見交換し、直接、中国の指導者と会ったことで、中国側に「日中関係の改善が重要である」との考えがあることを確認でき、訪中の目的を果たすことができたと述べられていた。
連立与党のリーダーの一人として、公明党の山口代表は、安倍総理の親書を持って訪中した。中国要人との一連の会談において、双方は日中関係の重要性と関係改善の必要性について改めて確認した。
南方週末:山口那津男代表と大使の間で親書の内容についてやりとりはあったか。
木寺大使:この親書は、山口代表が日本から北京まで持ってきたものであり、具体的な内容は山口代表が一番よくご存じである。私の理解では、安倍総理は日中関係を重視し、現在は日中関係を改善しなければならないと考えており、親書はこうした考え方を習近平総書記に伝えたものである。
南方週末:習近平総書記が山口代表と会見した際、日中のハイレベルの会談を真剣に検討すると話した。その後、安倍総理も「対話の門戸を開く」と発言した。日中間のハイレベルの対話を実現するために、更にどのようなプロセスが必要か。
木寺大使:日本政府はかねてから、尖閣諸島(中国は“釣魚島”と呼称)をめぐる情勢について、中国と意思疎通を保ち、出口を見出していきたいと強調している。これは容易ではないが、日本は引き続きこのように取り組んでいく。
今後必ず日中関係を改善していくことで、日中双方はすでに一致している。自分は北京に来てから、楊潔篪外交部長と全部で4回会い、この一ヶ月以内に習近平総書記ともお会いした。双方の要人が交流する環境が少しずつ現れてきている。
南方週末:着任後の短い期間で、大使は現下の日中関係についてどういった新しい認識があったか。
木寺大使:自分は北京に赴任する前から日中関係は厳しいと認識していたが、着任して一ヶ月経った現在も、この印象に変わりはない。中国側とお会いするときには、我々は現在の難局を乗り越えて、経済や文化等の交流を推進していくべきであると説明をしている。日中両国は40年で深く、広い関係を積み重ねてきた、もし政治関係で困難に直面したからといって、経済や文化面での交流に影響を与えるならば、これは日中両国国民の利益に合致しない。
習近平総書記と山口代表の会見は日中両国のハイレベル交流の新しいきっかけになるかもしれない。自分はよりいっそう各方面の交流を推進したい。
南方週末:現在の日中関係の困難な状況に対し、駐中国日本国大使館は具体的にどのような仕事を行ったか。
木寺大使:最近1ヶ月では、大使館内で各種の行事を行った。例えば、日中両国の学生による成人式や、照明デザイナーの石井幹子先生による映像上映会、太鼓の大家である藤本吉利氏による公演である。
同時に、引き続き足を使った外交を続けていきたい。様々な場所へ赴き、中国側の色々な方と交流していきたい。
「日本は戦争を望まない」
南方週末:再び安全保障の問題について話をしたい。安倍総理、麻生太郎財務大臣、岸田文雄外務大臣らは相次いでASEAN各国を訪問したが、これは日本が現在「利害を共有する」国と手を結んで、共同して中国に対抗するという意味か。
木寺大使:それはまったく当たらない。「そうしたことは全くないし、日本が中国を包囲するという言い方も事実と合致しない。
日本は一貫してASEANとの関係を重視してきた。中国においてと同じように、日系企業は積極的にASEAN地域でも事業を展開し、現地の経済発展に貢献している。本年はちょうど日本とASEAN協力40周年であり、全てのASEAN諸国はいずれも日本にとって重要な協力パートナーである。安倍総理をはじめとする日本の要人のASEAN各国歴訪は、ちょうどこのような緊密な日ASEAN関係の下に行われたものである。
南方週末:安倍総理就任後、日本政府は民主党政権が制定した「防衛計画大綱」と「中期防衛力整備計画」の見直しを決定した。これは日中両国の軍事対立の可能性が増したことを意味するか。
木寺大使:自分はそのようには全く考えていない。日本は専守防衛の方針を堅持し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならず、こうした防衛理念は今後も変わりがないと自分は認識している。「防衛計画大綱」の見直しについては、自分の理解では、基本的考えは我が国周辺の安全保障環境を総合的に考え、それを踏まえて議論を進めているものであり、特定の国の軍事的脅威に対抗することを意図したものではない。
私が再度強調したいことは、第二次世界大戦後、日本は平和を愛し、責任ある民主国家として、一貫してアジアの平和と繁栄に大きく貢献してきた。これは国民に支持された日本の国是であり、今後とも変わることはない。
南方週末:それでは、安倍内閣の日本国憲法改正の可能性を我々はどのように見るべきか。
木寺大使:憲法改正については、日本国内で様々な角度から長い間議論されてきている。 北京に着任してから気づいたことは、一部の日本のメディアの報道が中国のメディアを通じて転載されると、中国の人々に懸念を生じさせている。こうした報道はおそらく推測した内容も含まれるであろうが、皆さんに懸念を生じさせる。安倍内閣の実際の政策を、読者の皆さんにはしっかりと見ていただきたい。安倍総理はすでに考えを表明しているが、それは、日本政府は、日米同盟の強化、近隣諸国との協力関係の重視、日本経済再生のための経済外交という3つの柱を基礎として、大局的・戦略的に外交活動を行うというものである。
南方週末:「中日必有一戦(中国と日本は戦争が避けられない)」という言論について、どう評価するか。
木寺大使:最近、一部メディアにおいて、日中軍事衝突の可能性がとりざたされているが、こうした報道に自分は困惑している。最近訪中した日本の要人も、訪中前にこうした報道ぶりに接していたが、中国の要人が実際には冷静であるとの印象を持って帰国している。
日中両国が隣国であるという事実は変わらない。もし中国側に、「中国と日本は戦争が避けられない」という意見があるのであれば、心配であるが、しかし日本側から事態をエスカレートすることは考えられない。日本は戦争を望まないし、良好な日中関係は両国の人々にとって不可欠のものである。日中両国は時には厳しい局面に直面することもあるだろうが、簡単に壊れてしまうことのない、分厚い関係がすでに形成されている。
両国の国民感情と世論形成において、メディアの役割はとても重要である。中国において、「日本は好戦的である」との言い方もよくみられるが、これは全く事実に反する。両国のメディアは正確、冷静、客観的な報道をしてほしいと強く望む。
「良好な日中関係は両国の人々にとって不可欠」
南方週末:小泉総理の時代、日中の間ではなお「政冷経熱」を維持できていたとするならば、昨年以降、日中関係はまさに「政冷経涼」の窮地に直面している。両国はどのように努力して経済関係を改善すべきか。
木寺大使:相互依存性の強い日中経済関係が損なわれれば、日本経済のみならず、中国経済にも影響が生じる。政治的に難しい状況にあるからといって日中関係全体が冷めてしまえば、双方国民の利益にならない。双方は事態をコントロールする時代に入り、協力や交流を推進し、Win-Winな関係を維持していくべきである。
日中協力の典型的な例として、環境保護分野と金融分野がある。環境保護分野では、自分は北京に赴任して一か月の間にすでに何回かスモッグを経験した。日本はかつて円借款を利用して中国と協力し、石炭に替えて天然ガスを利用した熱電供給設備を中国に導入した。日本の民間人の植樹活動も中国各地で行われている、日本人もかつて深刻な環境問題を克服してきており、日本の経験や技術は中国のためになる。
金融分野では、2011年末に、日中首脳間で金融協力の促進に合意した。2012年6月には円・人民元の直接交換が開始され、取引規模も拡大してきている。今後の市場規模の拡大により、さらなる取引コストの低下や決済リスクの低減が期待される。
最後に、中国にある日系企業の努力にも目を向けていただきたい。これら中国で登記した日系企業及び関連企業は1000万人以上の中国国民を雇用しており、これら企業の製品は中国製品であり、中国で消費されているものもある。また、日系企業は中国の多くの分野で社会貢献活動を行っており、孤児院、障害者施設、老人ホームへの人的・物的支援などを行っている。こうした日系企業の地道な努力をもっと中国の方に知っていただきたい。
南方週末:「日中韓FTA」構想が2002年に提起されて以来、ずっと「難産」に直面しているようである。日中韓FTAの見通しは明るいと思うか。2012年末に日中韓3国がFTA交渉の再開を宣言した後、この方面において日本政府はどのような努力を行ったか。
木寺大使:日中韓FTA交渉は確かに準備に時間がかかった。しかし、2012年の東アジアサミットで、日中韓三カ国は日中韓FTA交渉を開始した。三カ国の貿易協定はアジア太平洋地域全体の経済統合の基礎となりうるものであり、同時に日中韓いずれにとっても重要なFTAとなりうる。
現在、日中の政治関係が困難な状況にある中で、我々は経済交流を促進する日中韓FTA交渉は当然高く評価すべきである。現時点で交渉の見通しについて述べることは難しいが、結果を決して悲観すべきではない、交渉は進むと思う。
南方週末:1991年から1993年の間、大使は外務省の中国課首席事務官を勤め、日中国交正常化20周年記念行事と天皇皇后両陛下訪中にも携わってこられた。その後の20年間、日本政府と日本人の中国に対する態度にはそれぞれどのような変化があったと思うか。
木寺大使:この20年間で中国は目覚ましい発展を遂げ、日中関係も更に厚く、幅広くなった。中国が地域及び国際社会に対して責任ある大国として、積極的な役割を果たすことについて、日本や国際社会の期待は、より一層高まっていると思う。
1991年から1993年、自分が外務省の中国課で首席事務官を勤めていた当時、中国は国際社会で難しい状況にあった。日本は対中円借款やエネルギー借款等の再開を通して、積極的に中国の改革開放を後押しし、中国もこれに感謝を表明した。
もう一つ忘れられないことは、1992年の天皇皇后両陛下の訪中である。両陛下は北京、西安、上海を訪問し、現地の人々から熱烈な歓迎を受けた。それはまさに日中関係史の輝かしい一ページであったが、皆さんには日中関係の良き時代を思い起こし、ともに日中関係の発展を推し進めていただきたい。
現在、日中関係は困難な状況にあり、日中両国の国民感情もそうした状況を反映して悪くなっており、自分としても懸念している。良好な日中関係は両国民にとって不可欠である。時代が移り、両国にどのような変化があっても、日中両国は永遠の隣国であり、相互の互恵関係も変わらない。自分は日中関係を信じている。
|