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日本のまちづくりに関する取組み

(14.09.09)

 

在中国日本大使館一等書記官
富田 建蔵
(日本国国土交通省より出向中)

 

 

1.はじめに


 日本が戦後歩んできた道のり、すなわち高度経済成長期において日本が遭遇した環境・公害問題、都市部への過度な人口集中と混雑問題、スプロール型の開発、エネルギー問題、そして現在直面している高齢化問題と、改革開放以来、中国経済・社会の急速な発展、そして様々な問題を見ていると、両者の相似性に思いが至るのは、自分だけではなく、多くの日本人、中国人の共通認識であろう。無論、中国と日本では、人口・国土面積の規模、政治体制・各種制度、文化・歴史、民族等々、異なる点は多いため、内容によってその相似性の程度や時間的なずれの幅が異なるものの、日本の過去の推移・現在の動向・未来の行方は、中国経済・社会の現状・将来を分析、予測する上で参考になるものだと思う。


 他方、近年、世界中で急速に普及が進んでいる情報通信技術(ICT)の利用は、あらゆる分野において効率性を高め、革新を生むものであり、日本と中国の相似性に大きな変化をもたらすものである。


 近年、日本や欧米諸国のまちづくりにおいて、「スマートシティ」という概念が流行している。スマートシティについて明確な定義は存在しないと思われるが、交通、水、エネルギー、情報通信、廃棄物処理、防災・減災といった基礎インフラや、教育・子育て、高齢社会対応(介護・医療)、治安、国際化といった生活インフラにおいて、すなわち都市の機能、アクティビティについて、ICTの活用を通じて、都市・地域レベルのマネジメントシステムを高度化して高効率性を実現し、市民・企業・政府の活動・生活の質を向上させるまちづくりのことであると考えられる。


 スマートシティの様に都市の各機能・アクティビティに着目した取組みを展開する際には、都市空間を総合的に捉えてまちづくりを進めていく都市計画との連携が必要不可欠である。


 したがって、日本のスマートシティの取組みをより良く理解するためには、日本のまちづくりの社会・経済的背景、都市計画に関する政策動向、様々なまちづくりの取組みに対する理解が重要であると考える。


 本稿では、中国におけるスマートシティを始めとするまちづくりの取組みの参考として頂くため、日本の「スマートシティ」に関する取組みやまちづくりに関する取組みの最新動向の概略を紹介する。

 

2.スマートシティ


 日本では、人口減少・少子高齢化や財政制約などへの対応とともに、資源エネルギーの制約や気候変動による自然災害リスクの増大など地球規模の課題への対応にも迫られており、こうした課題を克服し、将来にわたって都市の持続可能性を維持していくため、ICTの活用や都市資源・人材の有機的結合などによる「都市のスマート化」の実現に向けた様々な取組が全国各地で行われており、今後の都市づくりの重要なキーワードとなっている。


 以下の事例は、その一例である。主な実施主体が地方自治体、不動産デベロッパー、メーカー等多岐に渡っている点が特徴的であるが、これはスマートシティという取組みが、政策としてはまちづくりのメインプレーヤーである地域・市場による自主的な取組みが尊重されているものであることに因るものである。したがって、スマートシティというコンセプトは、まちづくり関係者によるマーケティング的な側面もあり、都市の価値・競争力を高め、産業の活性化に資するものにもなっている。

 

(スマートシティ取組事例)


名称(場所)

コンセプト・目標

主な実施主体

柏の葉キャンパスシティ(千葉県)

「柏の葉スマートシティ」:環境共生都市、健康長寿都市、新産業創造都市

柏市、千葉県、東京大学、千葉県、三井不動産、日立、日建設計

柏市豊四季台地域(千葉県)

スマートウェルネス住宅・シティ

柏市、UR都市機構、東京大学

大丸有スマートシティ(東京CBD地区(大手町・丸の内・有楽町))

公民協調のまちづくり
環境性と防災性を両立したまちづくり

三菱地所その他地区内地権者

新宿区西富久地区(東京都)

災害に負けないレジリエントなまちづくり

野村不動産、三井不動産レジデンシャル、積水ハウス、阪急不動産

ふなばし森のシティ(千葉県)

スマートシェア・タウン構想

三菱商事、野村不動産

Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(神奈川県)

CO2排出削減70%、生活用水30%削減、再生エネルギー利用率30%以上、ライフライン確保3日間

パナソニック

横浜市(神奈川県)

課題先進国としての環境都市構想

アクセンチュア、東京ガス

豊田市(愛知県)

エネルギーとモビリティを活用した低炭素なまちづくり

トヨタ自動車

北九州市(福岡県)

公害を乗り越えた経験と持続的に創造するイノベーションの活用

北九州市

 

3.日本のまちづくりの背景


 こうしたスマートシティの取組みをより良く理解して頂くため、日本のまちづくりが直面している社会・経済的状況について、以下説明する。


 まず、日本の人口動向であるが、日本の総人口は、2004年をピークに、今後100年間で100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく可能性。この変化は千年単位でみても類を見ない、極めて急激な減少である。日本全体の人口は30年後に16%減少し、老年人口は31%増加し、生産年齢人口は29%減少すると見込まれている。地方都市においては、人口がピークに達してから10年ほど経ち、老年人口の増加は緩慢になるが、生産年齢人口は大幅に減少すると見込まれる。


 次に、居住の動向であるが、高度成長期にはニュータウン整備、安定成長期には拠点都市・地域の重点整備が行われてきたが、市街地は人口増や不動産価格の高騰とともに一貫して郊外へと拡大してきた。地方圏の県庁所在都市では、1970年から2010年までに人口が約2割増加する中で、市街地は2倍に拡大してきた。しかしながら、今後、高齢化・人口減少が進むと、空家・空地が増加するとともに、拡大した市街地に高齢者を含む住民達が低密度に居住する状況になりかねず、問題であると認識されている。


 また、財政状況においては、日本の将来については、複数のシナリオが存在するにせよ、今後の方向性は、国と地方の公債等残高は増加傾向、財政収支は悪化傾向が継続することが見込まれる。今後、各種インフラ(社会資本)について巨額の更新費用が必要となり、将来的に維持管理・更新費用すら賄えなくなる可能性がある。


 ここで都市構造と行政コストの関係について見てみると、市町村の人口密度と行政コストは、人口密度が小さいほど、1人当たりの行政コストが増大する関係にある。特に地方の中小都市において顕著にみられる傾向であるが、人口減少、市街地拡大等に伴って空屋・空地が増加している。土地利用の低密度な市街地ほど自動車の依存率が高くなり、運輸旅客部門のCO2排出量が増加する傾向にある。一般に、人口密度が高くなるとCO2排出量が小さくなる傾向にある。


 日本は、人口減少・超高齢化社会を迎え、今後は日常生活に必要な機能が身近なところに集積し、自家用車に過度に頼ることなく、公共交通によってアクセス出来るようなコンパクトなまちづくりを行うとともに、持続可能な経済・社会を実現するため、付加価値生産性を高め、絶え間ないイノベーション、高付加価値な財・サービスを生みだす国際競争力強化に向けたまちづくりについても、メリハリをつけて取組む必要がある。

 

4.日本政府の方針・最新都市政策の動向


 こうした状況を踏まえ、日本国政府は、「人口減少や高齢化が進展する地方都市においては、民間の知恵や資金を活用しつつ、それぞれの地域戦略に基づき、コンパクト・シティやスマートシティを実現・拡大するとともに、公共交通の充実や高齢者等が安心して暮らせる住宅の整備等を行う。」(「経済財政運営と改革の基本方針」(2013年6月14日閣議決定))「安心・健康・省エネでバリアフリーにも配慮した歩いて暮らせるまちづくり「スマートウェルネス住宅・シティ」を実現」(日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定))するという方針を相次いで打ち出している。


 こうした方針に関連する日本国政府の政策をいくつか紹介する。

 

①環境に配慮したまちづくり
「都市の低炭素化の促進に関する法律」(2012年):
 東日本大震災(2011年3月11日)を契機とするエネルギー需給の変化や国民のエネルギー・地球温暖化に関する意識の高揚等を踏まえ、低炭素・循環型社会の構築を図るとともに、市街化区域等における民間投資の促進を通じて、成功事例を蓄積し、その普及を図り、住宅市場・地域経済の活性化を図る観点から制定。同法は、地球環境に優しい暮らし等の新しい視点からまちづくりに取り組んでいくための第一歩となる基本法である。同法に基づき、地方自治体が国(国土交通大臣、環境大臣、経済産業大臣)が策定する基本方針に基づいて低炭素まちづくり計画を作成。計画の内容は、①都市機能の集約化(病院・福祉施設、共同住宅等の集約整備、歩いて暮らせるまちづくり、民間等による集約駐車施設の整備)、②公共交通機関の利用促進、③建築物の低炭素化、④緑・エネルギーの面的管理・利用の促進(NPO等による緑地の保全や緑化の推進、未利用エネルギー(下水熱等)の利用、都市公園・港湾隣接地域での太陽光発電、蓄電池等の設置))

 

②コンパクトシティへの誘導
都市再生特別措置法等の一部改正(2014年):
 今後見込まれる地方都市の拡散した市街地における急激な人口減少と大都市における高齢者の急増に対処するため、都市全体の構造を俯瞰しつつ、居住者の生活を支えるよう、コンパクトなまちづくり(多極ネットワーク型コンパクトシティ化)を推進するもの。具体的な内容は、住宅及び医療、福祉、商業等居住関連施設の立地の適正化を図るため、これらの施設の立地を一定の区域に誘導するための市町村による立地適正化計画の作成、同計画に記載された居住関連施設についての容積率、用途規制の緩和。誘導すべき施設を整備する事業者への財政支援や、住宅整備を行う民間事業者による都市計画・景観計画の提案制度も盛り込まれている。

 

③大都市の国際競争力強化
国際競争拠点都市整備事業(2014年):
 大都市の国際競争力強化を図るため、国内外の主要都市へのアクセス強化や都市機能の高度な集積を図るために必要な都市基盤施設の整備等に対する補助。

 

④都市交通政策の総合化・戦略化
 都市交通政策は、単体の政策として取組むのではなく、徒歩、自転車、公共交通等の多様な交通モードを包括的にとらえて(交通流対策の推進と公共交通機関の利用促進)、まちづくり(集約型都市構造の実現)と連携した総合的かつ戦略的な施策を推進するものと位置付けられている。

 

⑤地方都市(市町村)による環境まちづくりの支援
「環境モデル都市」「環境未来都市」:環境や超高齢化問題を解決し、経済成長を実現する成功事例を地方公共団体が創出し、全国へ展開・波及させることで持続可能な経済社会づくりの推進を図るとともに我が国の優れた取組を世界に発信することを目的とするもの。
・「環境モデル都市」:温室効果ガス排出の大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆的な取組にチャレンジする都市・地域を選定。国は地方公共団体の自主的取組みを側面支援。2013年度までに23都市を選定。将来的に40~50都市・地域を選定。
・「環境未来都市」:環境、社会、経済の三側面に優れた、より高いレベルの持続可能な都市で、先進事例となって国際展開が期待されるもの。環境モデル都市の中から厳選される。2011年度には11都市・地域(神奈川県横浜市、千葉県柏市、福岡県北九州市等)を選定。

 

⑥医療・福祉に着目したまちづくり
スマートウェルネス住宅・シティ(2014年):
 高齢者をはじめ多様な世代がまちで交流し、安心して健康で暮らすことが出来る環境整備で、現在、全国で先進的な取組みが始まっている。具体的内容は、①既存の「高齢者対応」の概念を超え、ICTも活用しつつ、省エネ、バリアフリー、生活拠点集約化等、安全で安心、健康に暮らせる住宅(サービス付き高齢者向け住宅等)整備・まちづくり、高齢者が保有する住宅・宅地資産の活用・資金化(リフォーム・不動産の流通促進)、②公有財産・公有地を活用したPPP(民間活力導入)によるリーディングプロジェクトの実施、次世代の住宅・まちづくり産業の創出と資金調達拡大のため、リートの活用に向けた環境整備、③公共交通の充実、超小型モビリティの整備の普及、である。①は、高齢者医療・福祉のソフト政策とも居住を基本とするという点において方向性の一致がみられるものであり、社会保障費用の適正化にも資すると言える。

 

5.結論


 ICTの活用という手段により都市の各機能・アクティビティに着目した「スマートシティ」、都市の構造・都市計画の配置に着目した「コンパクトシティ」、省エネルギー、省資源、低炭素、自然共生に着目した「環境都市」、医療・福祉に着目した「ウェルネス住宅・シティ」、これらのまちづくりは、着眼点はそれぞれ異なるものの、いずれも、ICTの活用を通じた都市機能の向上、都市計画(コンパクトシティ)、公共交通網の再構築という都市関連政策が含まれるものであるという点と、都市・地域レベルのマネジメントシステムの高度化を図るものであるという点と、究極的には、社会・経済状況を踏まえつつ、持続可能な都市の創造を目指すものである点においては、概ね共通していると言える。


 注意すべきは、いずれか一つの要素にだけ取組み、他を疎かにしては、都市・不動産開発のマーケティングという観点からは一時的に多少のメリットがあったとしても、持続可能な都市は実現しないということである。例えば、省エネの機器・設備を導入さえすればスマートシティが実現するというものではなく、マスタープラン、都市計画作成段階からICTの活用を念頭に置く必要がある。都市の発展レベル、地理、文化・歴史等のポテンシャル(特色)や直面している課題に応じて、都市の構造を俯瞰しつつ、都市機能の各分野の連携・統合・パッケージ化を図り、体系立った総合的で付加価値の高い、個性豊かなまちづくりを行うことが望ましい。


 また、質の高い都市、経済活動、市民生活を実現するためには、政府、企業、市民がまちづくりに関する理念を共有するとともに、企業や市民の利益が何かを明確にして積極的な協力、参加を引き出し、相互に連携し、継続的に努力をする必要がある。政府においては、まちが出来た後の都市経営に対する意識や、長期的な視野に立った計画的な取組みが求められる。

 

6.最後に


 日本では、海外における交通・都市開発の分野で、海外市場に進出する日本企業を支援するべく、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構が間もなく設立される予定である。同機構は、日本企業が海外において当該国企業と共同で実施する各種交通事業、都市開発事業、住宅整備事業等に対し、日本企業、民間金融機関等と一体となって事業出資、事業参画、融資を行うものである。


 また、不動産デベロッパー、商社、メーカー、ゼネコン、建設コンサルタント、金融機関等の日本企業約50社が2011年に共同で設立した「海外シティエコシティ協議会(J-CODE)」は、日本の都市開発において得られた知見と技術を総合的に提供し、まちづくりの構想・企画段階から開発、管理運営に至るまで事業推進を図るものである。


 今後、日中間のまちづくりに関する交流が深まり、こうした日本の組織が中国においても活躍し、中国のまちづくりに貢献する日が来ることを願ってやまない。

 

 


在中国日本国大使館
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