中国の行政処分について

平成31年2月18日
 
森・濱田松本法律事務所
(平成30年度受託法律事務所)
 
本資料は、中国[1]の行政処罰の概要をQ&A方式により、説明するものです。
 
Q1 行政処罰の根拠法令
中国において、行政処罰の根拠法令として、どのようなものがありますか。
A1
中国では、法令の規定に違反した場合、違反者に対して、行政処罰を科す建付けとしている法令が多数あります。具体的には、治安管理処罰法、出入国管理法、独占禁止法、不正競争防止法、環境保護法他の環境関連法、特許法、商標法、著作権法、製品品質法、消費者権益保護法、食品安全法、薬品管理法、消防法、建築法、ネットワーク安全法、会社法、証券法、税関法、外貨管理条例、税収徴収管理法等があげられますがこれらに限りません。法律以外の行政法規、地方性法規、部門規則等に行政処罰に関する規定が定められていることもあります
また、行政処罰の設定及び実施には、行政処罰法を適用することとされており(行政処罰法2条)、行政処罰法に、行政処罰の種類、実施機関、管轄及び適用、手続、執行等が規定されています。
 
Q2 行政処罰手続の流れ
中国の行政処罰手続の流れについて、ご説明ください。
A2

 
中国の行政処罰手続の流れは、一般的には上記のとおりです。ただし、具体的な状況、処罰の根拠となる法令等によっては、これと異なる進行となる場合があります。
 
Q3 行政処罰の簡易手続
行政処罰の簡易手続について、ご説明ください。
A3
違法事実が確実で法定の根拠がある場合において、個人に50元以下の過料を、法人又はその他の組織に1,000元以下の過料又は警告の行政処罰を与えるときは、現場で行政処罰を決定することができ、この手続のことを行政処罰の簡易手続といいます。行政処罰の簡易手続の流れは以下のとおりです。

 
Q4 行政処罰の種類
行政処罰には、どのような種類がありますか?
A4
行政処罰には、警告、過料、違法所得の没収、不法財物の没収、生産停止・営業停止の命令、許可証・免許の暫時没収又は取消、行政拘留等があります。
 
Q5身分証明書の提示、調査の際の人数
行政機関が調査等を行う場合、行政機関の調査官に対して、身分証明書の提示を求めることはできますか。また、1人の調査官が現場調査等の調査を行うことはできますか。
A5
行政機関の調査官が調査又は検査を行う場合、調査官は、当事者又は関係者に身分証明書を提示しなければなりません。第三者が調査官になりすまして、訪問している可能性があるため、調査官に身分証の提示を求め、その内容を確認し、状況によっては調査官の所属する行政機関に連絡して確認しておくことを推奨します。
また、調査官は、調査又は検査を行う場合、2人以上で調査等を行わなければなりません
 
Q6聴聞手続
どのような場合に当事者が聴聞を請求する権利を有しますか?
A6
行政機関は、生産停止・営業停止の命令、許可証又は免許の取消、高額の過料等の行政処罰決定を行う前に、当事者に聴聞を請求する権利があることを告知しなければなりません。当事者が聴聞を請求した場合、行政機関は聴聞を行わなければなりません。当事者は行政機関の行う聴聞にかかる費用を負担しません。
 
Q7行政処罰決定を受けた者の権利
行政処罰決定を受けた者は、どのような権利を有しますか?
A7
行政処罰決定を受けた者が、行政処罰決定に不服のある場合、原則として、法により行政不服審査を申し立て、又は行政訴訟を提起する権利を有します
 
 
本資料の利用についての注意・免責事項
 本資料は、森・濱田松本法律事務所が2018年12月末日までに入手した中国の法令等の公開情報に基づき作成しており、その後の法令改正等を反映していません。また、本資料に掲載する情報について、一般的な情報・解釈がこれと同じであることを保証するものではありません。本資料は参考情報の提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。中国において、行政調査を受け、又は行政処罰を受ける等した場合には、具体的な事件の状況にもよりますが、別途、弁護士等の専門家に個別具体的な法的助言をお求めください。
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以上
 
[1] 本資料において、中国とは中国大陸を含み、香港特別行政区、マカオ特別行政区及び台湾地区を含みません。