中国の行政不服審査及び行政訴訟について

2019/2/18
森・濱田松本法律事務所
(平成30年度受託法律事務所)
 
本資料は、中国[1]の行政不服審査及び行政訴訟の概要をQ&A方式により、説明するものです。
 
一 行政不服審査
Q1行政不服審査手続の内容
行政不服審査(中国語:行政复议)とはどのような手続ですか?
A1
行政処罰等の具体的行政行為に対して、当該行政行為によって合法的権益を侵害されたとする決定を受けた者(個人、法人及びその他の組織)が、一級上又は同級の別の行政機関等に対して、当該行為を行った行政機関を被申立人として不服を申し立て、申立てを受けた行政機関が当該行為の適法性等について、再度審査し、決定を行う手続です。
 
Q2行政不服審査手続の流れ
行政不服審査の手続の流れについて、ご説明ください。
A2
行政不服審査手続フローチャート
 

 
※行政不服審査法18条
 
中国の行政不服審査手続の流れは、一般的には上記のとおりです。ただし、具体的な状況、具体的行政行為の根拠となる法令等によっては、これと異なる進行となる場合があります。
 
 
Q3 行政不服審査の受理範囲
どのような場合に行政不服審査申立てをすることができますか?
A3
行政機関の具体的な行政行為により自身の合法的権益が侵害されていると認識する場合、不服審査申立てをすることができます。たとえば、行政機関が行った警告、過料、違法所得没収、生産停止・営業停止命令等の行政処罰決定に不服である場合、行政機関が行った許可証、営業許可証等の証明書類に関する変更、中止、取消決定に不服である場合等がこれに該当します(行政不服審査法6条参照)。
 
Q4 行政不服審査を申し立てる機関
行政不服審査を申し立てる場合、どこに申し立てればよいですか。
A4
具体的な行政行為を行った機関、政府毎に、どこに対して行政不服審査を申し立てるか、行政不服審査法12条乃至15条、行政不服審査法実施条例23条乃至25条等の法令に規定があります
たとえば、県級以上の地方の各級人民政府業務部門による具体的行政行為に不服である場合、申立人の選択によって、当該部門と同級の人民政府に行政不服審査を申し立てることもでき、一級上の主管部門に行政不服審査を申し立てることもできることとされています(行政不服審査法12条1項)。
また、税関、金融、国税、外貨管理等の垂直的な指導管理を実行する行政機関及び国家安全機関による具体的行政行為に不服である場合、一級上の主管部門に行政不服審査を申し立てることとされています(同条2項)。
 
Q5 行政不服審査の申立て期間
行政不服審査を申し立てることのできる期間に制限はありますか。
A5
行政不服審査を申し立てることのできる期間には一定の制限があります。
公民、法人又はその他の組織は、具体的行政行為によりその合法的権益が侵害されていると認識する場合、原則として、当該具体的行政行為を知った日から60日以内に行政不服審査の申立を提出することとなっています(行政不服審査法9条1項。但し、法律に規定する申立期間が60日を超える場合を除く。)。また不可抗力又はその他の正当な理由により法定の申立期間が過ぎた場合、申立期間は障害が消滅した日から継続して計算することとされています(同2項)。
 
Q6 自分以外の者を対象とする行政行為についてなされた行政不服審査手続への参加
自分以外の個人又は法人に対してなされた行政行為について、行政不服審査手続に参加することができますか?
A6
自分以外の個人又は法人に対してなされた具体的な行政行為について、当該行政行為と利害関係を有するその他の公民、法人又はその他の組織は、第三者として行政不服審査に参加することができます
 
Q7 意見陳述、証拠提出
審査請求の審理において、意見を述べたり、証拠書類を提出したりすることはできますか?
A7
行政不服審査は原則として書面審査の方法を用いますが、申立人が申立を提出し、又は行政不服審査機関の法制業務担当部門が必要であると認識する場合、関連組織及び関係者に対して事情調査を行い、申立人、被申立人及び第三者の意見を聴取することができます
 
Q8執行の停止
行政不服審査期間中、具体的行政行為の執行は停止しますか?
A8
行政不服審査期間中、行政処罰等の具体的行政行為の執行は停止しません。但し、被申立人が執行を停止する必要があると判断する場合、行政不服審査機関が執行を停止する必要があると判断する場合、申立人が執行停止を申し立て、行政不服審査機関がその請求が合理的であると認め、執行停止を決定する場合等には、執行を停止することができます。
 
二 行政訴訟
Q9 行政訴訟手続の流れ
行政訴訟の手続の流れについて、ご説明ください。
A9
行政訴訟手続フローチャート
 

 
※1 行政行為が行われたことを知った日又は知っていたはずである日から6か月以内。ただし法律に別段の定めがある場合を除く(行政訴訟法46条)。また、行政機関の不作為等の場合について、別途規定が設けられている。
中国の行政訴訟手続の流れは、一般的には上記のとおりです。ただし、具体的な状況、具体的行政行為の根拠となる法令等によっては、これと異なる進行となる場合があります。
 
Q10行政訴訟の受理範囲
どのような場合に行政訴訟を提起することができますか?
A10
人身の自由及び財産権等の適法な権益を行政機関が侵害したと認める場合、行政訴訟を提起することができます。たとえば、行政拘留、許可証及び免許証の一時的差押又は取消、生産、営業の停止命令、違法所得の没収等の行政処罰に不服がある場合、行政許可を申請したが、行政機関が拒絶し、もしくは法定期間内に回答しなかったとき、又は行政機関の出した行政許可に関するその他の決定に不服がある場合等がこれに該当します(行政訴訟法12条参照)。
 
Q11 行政不服審査と行政訴訟との関係
行政訴訟を提起する前に、行政不服審査を申し立てることが必要ですか?
A11
法律に別途規定がない限り、行政行為に不服がある場合、行政不服審査の申立てか、行政訴訟の提起を選択することができ、行政不服審査を申し立てることなく、行政訴訟を提起することは可能です。法律、法規が、まず行政機関に不服審査を申し立て、不服審査決定に不服のある場合は人民法院に訴訟を提起しなければならないと定めている場合は、法律、法規の規定によります(行政不服審査法44条)。また、行政不服審査の決定に不服である場合、不服審査決定書を受領した日から15日以内に人民法院に行政訴訟を提起することができます(行政不服審査法45条)。ただし、両手続を同時に申立て等することはできません。
 
Q12 行政不服審査を経ずに、直接行政訴訟を提起する場合の出訴期間
行政不服審査を経ずに、直接行政訴訟を提起する場合の出訴期間を教えてください。
A12
公民、法人又はその他の組織が、行政不服審査を経ずに、人民法院に直接訴訟を提起する場合は、法律に別段の定めがある場合を除き、行政行為が行われたことを知った日又は知っていたはずである日から6か月以内に提起しなければなりません(行政不服審査法46条1項)。
また、不動産に起因して訴訟が提起された事件については、行政行為が行われた日から20年を経過してから、その他の事件については、行政行為が行われた日から5年を経過してから訴訟が提起された場合、人民法院はこれを受理しないこととされています(同条2項)。
 
Q13行政訴訟の管轄
行政訴訟の管轄について、説明ください。
A13
原則として、基層人民法院が、第一審の行政事件の管轄権を有します。行政事件の地域管轄について、最初に行政行為を行った行政機関の所在地の人民法院が管轄権を有します。不服審査を経た事件は、不服審査機関所在地の人民法院も管轄権を有します。人身の自由を制限する行政強制措置に対して不服があり、提起された訴訟については、被告所在地又は原告所在地の人民法院が管轄権を有します。不動産に起因する行政訴訟については、不動産所在地の人民法院が管轄権を有します。
 
Q14行政訴訟の被告
行政訴訟において、誰を被告として訴えますか(行政不服審査決定を行った行政機関も被告とすることができますか)。
A14
公民、法人又はその他の組織が人民法院に直接訴訟を提起した場合、行政行為を行った行政機関を被告とします。不服審査を経た事件については、不服審査機関が元の行政行為を維持する決定をした場合は、元の行政行為を行った行政機関及び不服審査機関を共同被告とします。不服審査機関が元の行政行為を変更した場合は、不服審査機関を被告とします。不服審査機関が法定期間内に不服審査決定を出さず、公民、法人又はその他の組織が元の行政行為について訴訟を提起した場合は、元の行政行為を行った行政機関を被告とします。
 
Q15行政訴訟の立証責任
行政訴訟の立証責任について説明してください(行政行為の適法性又は違法性について、誰が立証責任を負いますか)。
A15
被告(行政機関)は、実行した行政行為に対して挙証責任を負い、実行した行政行為の証拠及び依拠した規範性文書を提出しなければなりません。被告が証拠を提出せず、又は正当な理由なく期限を徒過して証拠を提出した場合は、相応の証拠はないものとみなします。
原告は、行政行為が違法であることを証明する証拠を提出することができます。原告が提出した証拠によって、行政行為の違法性が十分に立証できない場合であっても、被告の挙証責任は免除されません。
 
Q16執行停止
行政訴訟期間内に行政行為の執行を停止できますか。
A16
行政訴訟期間中、行政行為の執行は原則として停止しません。但し、(1)被告が執行を停止する必要があると認める場合、(2)原告又は利害関係者が執行の停止を申し立て、人民法院が、当該行政行為の執行が損失の補填に困難をもたらし、かつ、執行を停止することが国の利益、社会公共の利益に損害をもたらさないと認める場合、(3)人民法院が、当該行政行為の執行が国の利益、社会公共の利益に重大な損害をもたらすと認める場合等は、人民法院が執行の停止を裁定します。
当事者は、執行の停止又は執行の不停止の裁定に不服がある場合には、裁定に対する上訴を申し立てることができます。
 
本資料の利用についての注意・免責事項
 本資料は、森・濱田松本法律事務所が2018年12月末日までに入手した中国の法令等の公開情報に基づき作成しており、その後の法令改正等を反映していません。また、本資料に掲載する情報について、一般的な情報・解釈がこれと同じであることを保証するものではありません。本資料は参考情報の提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。中国において、行政不服審査を申し立て、又は行政訴訟を提起する等の場合には、具体的な事件の状況にもよりますが、別途、弁護士等の専門家に個別具体的な法的助言をお求めください。
 日本政府、外務省、在中国日本国大使館、領事館及び森・濱田松本法律事務所は、本資料の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的又は懲罰的損害等について、一切の責任を負いません。
 
以上
 
[1] 本資料において、中国とは中国大陸を含み、香港特別行政区、マカオ特別行政区及び台湾地区を含みません。