日中環境協力概要

令和2年3月14日
日中友好環境保全センター
貴陽の製鉄工場における日中協力事業の対策前後の変化
日本と中国は、環境保護の分野で長年の協力関係にあります。これまで日本から中国に対しては、円借款、技術協力などにより3兆円以上(約2千億元)の支援が実施されていますが、このうち1兆円以上(約7百億元)が環境分野の案件です。1996年には、北京に日中友好環境保全センターが建設され、環境政策の立案、観測・分析 、研究、人材の能力建設等について支援が行われてきました。毎年、多くの中国の行政担当者や専門家が日本を訪問し、研修に参加し、日本の経験に学ぶとともに、日本側の関係者と交流を深めています。

大気汚染分野では、第11次5カ年計画では二酸化硫黄の総量削減が、第12次5カ年計画では窒素酸化物の総量削減が進められていますが、日本政府は、中国側のニーズに応え、政策の立案や各地でのモデル事業の実施、人材育成等を支援してきました。具体的な事業としては、たとえば、地域暖房の燃料を石炭から天然ガスに転換するプロジェクトを、北京、遼寧省、甘粛省、内モンゴル自治区など各地で実施し、大気汚染軽減に貢献しています。

2013年1月以降、中国の中東部地域でスモッグが広範囲に発生したことを受け、日本政府は中国政府に対し、我が国の経験を共有し、中国側のニーズを踏まえた協力を行う用意があることを伝えました。4月には、北京で大気汚染防止セミナーを開催し、日本の中央政府、地方政府、研究者、企業から、これまでの日本の大気汚染対策の経験を紹介するとともに、中国側専門家との間で、活発な意見交換を行いました。

日本企業も、中国との大気汚染分野の協力に大きな関心を持っています。日中経済協会は、約500社の日本企業をメンバーとする「中国大気汚染改善協力ネットワーク」を発足させました。今後、中国側からの要請に応じて、専門家の派遣、訪日団の受け入れ、日中での交流会の開催を行う予定です。また、日本において大気汚染を克服してきた知見、経験、技術、設備等、ハード、ソフト両面の内容を持つ大気汚染の改善に関する日本の協力可能事項一覧を作成し、中国側に提供予定です。

地方自治体間での協力も活発です。たとえば、日本の京都市と陝西省西安市は、1974年の友好都市提携以来、教育、文化、スポーツ等幅広い分野での親善交流や技術研修生の受入を行ってきましたが、2008年からは、大気環境改善のための協力を展開しています。2012年7月には,京都市の環境行政に携わる職員を西安市に派遣し,大気汚染の実態調査や浮遊粒子状物質の知識,測定方法,削減施策等の知識の習得に向けた研修を行いました。2013年の2月には、西安市の環境行政に携わる職員を京都市に招いて訪日研修を実施し、大気環境管理の状況を詳細に視察しました。

日中間では、大気汚染以外にも、水質、土壌、重金属汚染、廃棄物対策、省エネ・再生可能エネルギー利用、気候変動対策等、様々な分野における政策や技術の共有、上下水道や地下鉄など公共インフラの整備、植林や森林保全、トキを始めとした野生動植物の保護など、様々な環境分野の協力が実施されています(詳細は、以下の各団体の活動紹介をご覧ください)。

環境問題には国境はなく、日本側は、今後も、美しい中国、美しいアジアを実現するため、日中間の環境分野における協力を更に発展させていく用意があります。